みんな元気になりますように 2

7人旅行8-F ページ22

「そう言えばどこかからテラスに出られるって言ってなかった？」

宮田が言い出し、



「寝室の方じゃない」

玉が答えたので、どきん、と心臓が音を立てる





襖の脇、薄い壁一枚の向こう側に5人が居る状況で覗くわけにもいかず、

誰かの衣擦れの音が近付いて来るのできたやまの頭を抱えながらじっとしていると、




「みんな、こっちから出られるよ！」

やや離れたところでニカの声が聞こえた

その声を合図にみんなの声が遠くなり、窓の外に出たことがわかる

そっと仕切りの壁のところから顔を覗かせて確認すると、窓の外に全員のシルエットが見えたので、ほっと胸を撫で下ろした





「もう！
見られたらどうするつもりだよ」

誰も部屋にいないことがわかるとすぐさま文句を言ってくる

「ね、ちょっとハラハラしたね」

「ちょっとどころじゃないって…」

腕の中で脱力していたきたやまが
抜け出そうとするので、

「待って…
もうちょっとだけ」


きゅ、ともう一度抱きしめた



そうしている間も打ち上げ花火の音が聞こえてくる

さっきの仲居さんの話では花火は15分くらいだそうだから、あと10分ほどあるだろう




「きたやまめちゃめちゃ可愛い…
まだ離したくない」


「……」


するとおとなしく腕の中に収まったままだったきたやまが、もそもそと動き、首に両腕を巻き付けて来てキスをしてくれた


思いがけない少し深いキスに、気持ちは昂りきたやまの身体に手を這わせる


うるうると薄暗い部屋でもわかるほどに水分を含んだ瞳が、窓の外の花火の光を映し出し、いつもよりキラキラと光るのが時折薄く開く瞼の隙間から見えて、堪らない気持ちになる



ひとしきりそうした後、両手のひらを俺の胸に当て、すっと身体を離したきたやまが、息を落ち着けるように大きくひとつ深呼吸をした



「…あとは帰ったらな…

みんなのとこ行くぞ」


振り切るように離れるきたやまも、どうやら気持ちは俺と同じらしかった

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