熱帯夜 K2 ページ3
「ちょっと座ってこ」
「え、まだ帰らないの?」
こうしてふたりでいられるこの時間をまだ失いたくない
公園の中程、木々に隠れた石のベンチに俺が向かって歩き出せば黙って着いて来てくれるふじがや
一緒に腰掛けると、
「んふふ」
これだけのことでなんだか笑えて来てしまう
蒸し暑く、風も吹かない熱帯夜
じりじりと汗ばんで、決して気持ちの良い環境ではないけれど、一緒にいればなんでもいい
「俺たちが普通の学生だとかだったら、こんなデートもしてたかな」
俺が言えば、
「お互い実家暮らしだったしね
こんな時間もあったかも」
「別の人生なんて考えたこともないけど、一回くらいならその頃に戻ってみたいな
誰の目も気にしないでこんなこともしてみたい」
「…きたやまならこの後の展開どうしたい?」
「そりゃ…」
ちら、とふじがやを見る
少し視線を落として、柔らかいことを知っているその肉厚な唇と、ふじがやの目を交互に見つめてしまえば、言いたいことを理解したふじがやが、ふ、っと笑った
「流石に今は無理だよ」
「…だな」
分かってる
でも、そんなこと少しでも考えたら我慢できなくなって来てしまって、
「もう帰ろう」
立ち上がり、さっさと歩き出した
いつの間にか漆黒の闇は高い空に消えていた
薄く藍色に明るみ始めた空を見て、少しだけ足を早める
こうなれば夜明けはすぐだ
ジョギングをする人なんかがちらほら現れ始めるだろう
残念ながらも少し離れて歩いていると、まだまだ暗い街の中
「…ねえ」
「ん?」
ぐ、っと強く腕を引かれて、ビルとビルの細い隙間の室外機の影に入り込む
「は、ん…」
何が起こったのかわからなかった
一瞬で気持ちの何もかもを持っていかれてしまうような、
少し強引な、でも甘くて優しいキスを暗闇で与えられ、
脚が立たなくなってしまいそうになったところで、唇が離れた
「…ごめん、俺が家まで待てなくなった」
「……….っ!!
もう、ばか!!」
俺だって我慢してたのに
自分が周りに気をつけろと言ったくせに
カクカクと震えてしまいそうになる膝をなんとか奮い立たせて、先に出て行ったふじがやを追いかけ、
そのまま別々にマンションのエントランスに入った
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まひろ(プロフ) - ちびさん» ちびさん💕Fさんの登場を喜んでくださるなんて🥰Kさんの気持ちに寄り添って下さりありがとうございます!ギャルソンKさんにひまわりがイメージぴったりなら嬉しいです❣️いつもいらしてくださり、本当にありがとうございます🥰 (9月26日 0時) (レス) @page36 id: be3649e5d4 (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - Fさんきましたね、めっちゃ嬉しかったです、やったキタキタ、となりました、ひまわりの花束もイメージぴったりでしたね、もらった時の嬉しそうな顔が浮かびましたわ⚪︎ (9月25日 9時) (レス) id: 09fd997198 (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - なななさん» なななさん💕感情込めて読んでくださりうれしいです🥰純粋なギャルソKさんのことは周りの人たちも頑張ってる分優しくなって無条件で応援したくなるみたいです☺️優しさの連鎖する仲間たちをこれからも見守っていただけたら嬉しいです🥰 (9月25日 7時) (レス) id: be3649e5d4 (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - ちびさん» ちびさん💕待っていてくださり嬉しいです😭ギャルソンKさん良い子なのでわがまま言えないのです☺️書いている作者も甘やかしたくなるほど良い子のギャルソンKさんを可愛がってくださり嬉しいです♡いつもありがとうございます🥰 (9月25日 7時) (レス) @page32 id: be3649e5d4 (このIDを非表示/違反報告)
ななな(プロフ) - お誕生日おめでとうひろみつー!!!!私もなんかうるうるしちゃいます🥺優しいお話しありがとうございます✨ (9月25日 0時) (レス) @page32 id: d0939bc255 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まひろ | 作成日時:2023年8月13日 0時