花屋とギャルソンの仲間たち(番外編)

想い1-M- ページ36

それから毎日のように玉は家を訪れた

何をするわけでもない

食事をしたりお茶を飲んだり、しゃべったりして数時間で帰る

それなら真っ直ぐに家に帰った方が楽だろうにと思うけれど、その時間を取ろうとしてくれていることが素直に嬉しかった


風呂に入ったり泊まったりもしようとしなかったので、そこもなんとなくほっとしていた


あまりにも近くにいることが、今は少し苦しく感じるから


ただ、こうなると言えてないことが気が引ける


明日がきたみつとの約束の日だ


今日はもう言わないと、と腹を括り、


「また明日来るから」


いつもの玉の別れの挨拶のタイミングで言った


「玉」

「ん？」


「明日さ、きたみつと食事に行く約束してるんだ」

「え？」

「遅くなると思うから、明日はだめだ、ごめん」

言えば、一瞬目を丸くした玉が、口を開く

「…なんで？」


「え？」

今度は俺が聞く番だった


「なんで行くの？

俺が、嫌だって言ったら？

それでも行くの？」



「なんでって…」



「俺のこと、好きなんじゃないの？」




「…たま」


突然のことで、何も言えない俺に、たたみかけるように言う玉を呆然と見詰めた


「……俺が、きたみつと食事するのが嫌なの？」
　

はっとして、くちびるを噛み締め、俯いた玉


黙ってしまった玉の表情からは、その感情は読み取れない







「たま、教えて？



なんで嫌なの？」





俺ももう逃げない
真っ直ぐに玉の顔を見て聞く






「………わかってるんでしょ」

「分からないよ」


恐る恐る、玉の頬に触れると、ぴくん、と肩を揺らす

顔を上げさせ、目詰め合ったその目は、戸惑いにゆらゆらと揺れていた


「ちゃんと言ってくれなくちゃ分からない」

想い2-T-→←迷い6-T-

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す