花屋とギャルソンの仲間たち(番外編)

迷い6-T- ページ35

北山くんからのメールに気付いて、脱力した俺は、カーペットに足を投げ出し、ぼんやりと座っていた

すると、



「玉？どうした？疲れちゃった？」


みやたがそばに居ることに気付かずにいたので、突然声をかけられてはっと顔を上げた


一瞬、躊躇ったものの、先程までのもやもやを、この後も抱えていられそうもなくて、覚悟を決めて目を合わせ、聞いた



「…きのうさ、北山くんとどんな話したの？」



急に聞いたからか、びっくりした様子で一瞬言葉に詰まるみやた


「ああ…

うん、詳しいことは言えないけど、人間関係でね、いろいろ悩んでいたみたい」


「それ、みやたも関係してるの？」

「え？」

「だってただのカフェの店員とお客さんなんでしょ？

そんなに頻繁に相談とかしてくるもんなの？」


トゲがあることは分かっていても、止めることができない

すると、真面目な顔になったみやたが、真っ直ぐ俺を見て言った


「…玉、きたみつと俺は、もうちゃんとした友達なんだ

とても大事に思ってる

きたみつとの話の内容は、今はちゃんとは話せないけど、話せる時が来て、その時玉がまだ気になるなら話すね」




みやたは誠実だ



俺にも北山くんにも



だから、信用できるんだ




もし仮に俺がみやたに何かを相談したなら、誰に聞かれてもみやたは秘密を守ってくれるんだろう


そんなところも好きなところだ



でも今は、教えて欲しかった



おれの心配をくだらないことだと思わせて欲しかった







「…わかった」


返事をして、そのまま立ち上がって寝室に向かう



ここでも俺は臆病で、肝心なところで最後まで向き合えない

自分から種を撒いておきながら、刈り取る勇気がない


みやたも特に何も言わず、追っても来なかったので、話はそこで頓挫した





俺は、いったい何がしたくてどこに向かっているのだろう


横になってみたものの、離れてはいても、いつも同じベッドで並んで寝ているから、広いベッドはなんだか落ち着かなかった


“とても大事に思ってる”


宮田の言葉が、さっきよりもさらに俺の心を重くした

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