大好きで大嫌いな彼【うらたぬき】 (ページ2)

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1話

「今日も部屋から出てこないか」

ドアの前で嘆いている兄、渉。
迷惑をかけているし、一緒にいて何もいい事のないのに、私のことをいちいち気にかけてくれる。

「朝ごはん置いておくから。俺は仕事行ってくる」

いつも無視して。いい加減素直になれよ、私。そんなに無視が楽しいの。

そうやって自分に問いかけて、直そうと心がけているけど、割り切れてない自分がいるのか、素直になれない。何でなんだろう。

「……行ってらっしゃい」

ぽつりとつぶやく。たまには挨拶、しなきゃって思ってたのがこういう形で出たのは驚きだけど、少しは兄を好きになれたのかな、と思うとなんか嬉しいな。

私の声が聞こえたのか、ドア越しに驚いた様な感じが伝わってくる。

「えっ！行ってきます！」

そんなに久しぶりだったかな、口をきいたの。

「私も仕事行くか」

そう言って部屋を出て、リビングに行く。

「3日帰ってこないってこと言ってないな。置き手紙でいっか」

メモに書き、家を出た。