いづる。 ページ44
「その格好では少し寒くありませんか?」
スニーカーの紐を結ぶ私を、日本さんは玄関の外から気遣うように尋ねた。
私は春らしいパステルの長袖シャツに、デニムパンツという出で立ちだった。
素直に「いいえ」と首を振りながら、あれ、と思う。
記憶は朧気だけれど、私のイメージする日本の四月はまだ少し寒い。
四月に入りたての早朝にしては、私の格好はやっぱり薄着かな、と思った。
それなのに全然寒くない。これは……
「ロシアさんとこの冬を経験した後だからですかね……」
「ああ……なるほど……」
玄関を出ると、日本さんの足元にお座りしていたぽちくんが「きゅわん」と挨拶してくれた。
散歩について行っていいかと尋ねると、日本さんは快諾してくれた。
だから私は素早く支度を終えて、朝の道をついて行くことにしたのだ。
もともと閑静な住宅街であろう通りは、時間帯も時間帯なだけにいっそう静かなようだった。
ぽちくんが忙しなく動かす脚の先、小さな爪がアスファルトにチャッチャと当たる音がする。
「いつもこんなに早いんですか?」
「ええ……いつもこれくらいには目が開いてしまうので」
「ちょっと早すぎるかなとも思いますけれど……日本さんもぽちくんも健康的ですね」
「恐縮です」
苦笑した日本さんは、東の方を向いた。
まだ低い位置の太陽が柔らかな光を出して、薄い雲を優しい色に染めている。
____綺麗。
じわと感じる暖かさに思わず目を細めた。
季節に明確な切れ目は無い、と思うけれど、風が運んできた桜の花びらもあって、これが春だ、と思った。
千年前の随筆が語る「あけぼの」にはもう遅い時間だけれど、それでもこの国の春は綺麗だ。
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タイトルがそろそろ大変です。このタイトル形式にした自分のせいです。
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サチ - 元少女今22ψさん» どうかお気になさらず!シリーズがまだまだ続いているのも素敵な作品がたくさんあるのも喜ばしいですよね……!有り難すぎるお言葉です。作品を見つけてくださり、お気に入りに入れてくださり、ありがとうございます。 (2021年10月22日 6時) (レス) @page45 id: b5bbe5e52b (このIDを非表示/違反報告)
元少女今22ψ - すみません、別の方のコメント欄と間違えてコメントしてしまいましたすみません、本当にすみません・・・あの貴方の作品読ませていただきましたもっと早く貴方の作品と出会いたかった(お気に入りに入れさせて貰います。 (2021年5月27日 22時) (レス) id: 463d9420f9 (このIDを非表示/違反報告)
元少女今27ψ - こんばんは、ついこの前ようつべにてヘタリアシリーズ最新作がUpされそれらを見てふっとこちらの作品を思いだし数年ぶりに見に来て読み返しました、最高ですまたヘタにハマりそうス(;ω;)。 (2021年5月27日 20時) (レス) id: 463d9420f9 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - とぬきちさん» 数年前の作品を覚えてて読みに来ていただけたことに感激しております…!恐ろしく遅い更新ですがこれからも続けていく所存です!こちらこそありがとうございます! (2020年9月5日 20時) (レス) id: 8a29a4a84c (このIDを非表示/違反報告)
とぬきち - はぁぁぁぁああ!!!連載続いてたんですね!!!数年前に占ツクにハマってしばらく離れていた者なのですが、ふと読みたくなって来てみたら続いていてすごく嬉しいです…ありがとうございます!応援してます!!! (2020年7月27日 19時) (レス) id: 38dc4cd85e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サチ | 作成日時:2016年8月3日 12時