3時 ページ4
誰か確認しなくとも分かる。だってそれは、何よりも愛おしい人の声だったから。
聞いた途端耳がぶわっと熱くなって、心臓がバクバク早鐘を打ち出す。ああ、そんなに荒ぶらないで欲しい。いつもみたいに冷静で居なければいけない、彼の前ではどうか 平常に。
「クラーク、何でこんな所に？」
平常にできた！今自分の頭を自分でこねくり回してヨシヨシしてあげたい気分だ！
何を隠そう私はイライ・クラークが好きなのだ。本当に好き。声もいいし、顔もかっこいいし性格もクールで素敵。本当に凄い好み中の好み過ぎる。だからいつも平常心を保つのに必死で、声が震えないかとか心配で、今日は平常に対応できたから少し感動した。
イライは首を傾げる。
「僕が何をしていたのか聞いていたんだけれど…、まあいい」
ハッと気付く。そうだ、平常に対応するのに必死で忘れていた。彼は私には何をしているのか質問していたのだ！いけない、ちゃんとしなければ。嫌われはしないと思うが、変な奴だとも思われたくない。
「捜し物してた。」
今度も声を震わせることなく返事ができた、私が頭の中でガッツポーズをしてる。
然し、その答えの異常さからか イライは訝しげな声で呟く。
「捜し物？こんな夜中に、君一人で？」
「ああ、うん。」
ううん、と悩むようなポーズをした彼は 少し視線を外して斜め上を見た。
思わず彼に見蕩れる。どんな格好をしていても絵になるな、と思いつつ 眺めていれば 不意に彼がこちらを向いて 目は隠れているというのにどきりと胸が鳴るので、思わずそっぽを向いてしまった。
「…？…ええと、…窓のパーツだろう？」
「は、なんで」
然し捜し物を凡そ当てられたことに驚きまた彼の方を見れば、彼は屋敷の方を指さし ひとつだけ枠から浮き出している窓の方を向いた。
「あれ」
「ああ…」
なんだ、そういう事か。
これじゃ私がヘマをしたのが丸わかりだし、荘園での(禁忌には至らないただの決まりだが)約束を破ったという事も丸わかりだ。情けなさと恥ずかしさで少し俯けば、頭上からぽろり と声が落ちてきた。
「僕も手伝おう。」
「へ、」
その言葉に驚く、嬉しさ反面申し訳なさ反面。なんでそんなことしてくれるんだろう、「だって」と続けられる言葉にどきどきしながら耳を傾ければ 彼は優しい声でこう言った。
「女の子一人をこんな寒くて暗いところに放っておいて、捜し物させるなんてだめだろう。」
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作者名：鯖原 | 作成日時：2019年2月20日 13時
