最終話 ページ42
僕の生まれ育った故郷の友人へ
お元気ですか、奥さんとは仲良くしてる?
僕は元気だ、荘園での暮らしにはもう馴染んで、すっかり当たり前になった。
ゲームだって仲間といい感じにチームワークを築けるようになったよ。空は相変わらず曇り空だけれど、そんなこともうどうだっていい程毎日が結構幸せだよ。
突然だけど君に聞いて欲しい事があるんだ。
前回、ピアニストのAについて散々に書いたせいで君から返ってきた手紙も散々な文章だったね。
これについては謝らせて欲しい。ごめん、君の好きなピアニストを馬鹿にして。もう馬鹿にしないって神に誓うよ。
なんて言ったって、君の好きなピアニストは僕の彼女になったんだから。
馬鹿になんてしないよ、寧ろこれからは彼女のいい所を綴っていくから君も嬉しいだろう?
君の言っていたピアニスト、Aは本当に素敵な人物だね。
出会えてよかった、君にポスターを貰っといてよかったとすら思ってる。もしかしたら君のおかげかもしれないし、僕は君にも感謝してるよ。
「イライ君、また手紙を書いてるの?」
噂をすれば。
ひらりとスカートの裾を揺らして、鈴を転がしたように可愛らしく微笑むAが手紙を覗き込んでいる。
「あれ、悪口を書いてるんだと思ってた。今回は褒め言葉だらけだね。」
「君の悪口なんか書く訳ないじゃないか。」
「よく言うよ」
そう言ってからから笑った後、徐に僕のペンを手に取った。
「この人私のファンなんでしょ?私のサイン書いてあげよっか。」
「ダメ」
即答する僕を、目を丸くして見詰める彼女。
「なんでさ」
「君のサインを上げる必要なんてない、此奴にあげるくらいなら僕に書いて」
「はあ」
彼女と関係が許されてからというもの大分彼女狂いになった僕は、いつもこうやって詰め寄っては彼女を呆れさせてる。でも、彼女もなんだかんだ言って僕に甘えてる、甘やかしてる。
きゅ、とペンの蓋を開けた彼女は 徐に僕の肩に手を置くと僕の頬にペン先を立てた。
「ちょっと、」
「はい、サインあげる。」
そうしてそれを見て「私のものだね」と冗談めかして笑うので、僕も釣られるように笑った。
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作者名:鯖原 | 作成日時:2019年1月30日 0時