4口目 ページ4
再開した時の複雑な気持ちが、蟠りとしてどうしても胸に残っている。
幼い頃近所に住んでいたひとつかふたつ年下の女の子が、自分に結婚しようと言い寄ってきてた事があった。ある日突然家にやってきたそいつは、母親とも仲良くなり母親同士を仲良くさせ完璧な作戦で俺に絡んできた。
けれど、名前を忘れてしまった。
傭兵になり過酷な戦場を幾度となく超えて、その記憶が頭を占領したせいで名前なんて覚えてなかったのだ。
容姿は覚えていた。
不機嫌そうに、への字にきゅっと紡がれた唇
周りに色々と言われているせいか目付きが少し悪くて、睨んだ時の目はナイフみたいに鋭い。
気が強そうな表情で、そして何より瞳が印象的だった。
強い思いを秘めたような、綺麗な色の瞳。
幼いながらに、宝石みたいだと思っていた。
それと、幼い自分の一目惚れだったからだ。
近所に女子が居なかったせいもあるかも知れないけど、少し年下の女の子が自分に言い寄ってはしゃぐ姿が可愛くて堪らなかった。
肝心の名前は記憶の中、霞んで忘れてしまったけれど それでも一度も顔や思い出は忘れなかった。
そんな彼女が、傭兵になる為に別れも告げられず別れてしまったあの子が目の前に突然現れたのだ。
屋敷の玄関、新ハンターを歓迎した奴らが集まってワイワイしているところを遠目に眺めてた俺は、その変わらない瞳を見て気付いた。
そして脳内に突如浮かび上がったその名前を、その文字の配列を 口に出そうとした瞬間
向こうが、俺の名前を呼んだのだ。
「…ナワーブくん？」
昔よりずっと高くなった身長、落ち着いた声色
ぽかんと開かれた口は やっぱりご機嫌ナナメな形をしている。目付きは前より厳しくなっただろうか、大きく見開いた目の中に ぽかんとだらしない顔を晒す俺がいた。
そして、あの白い生足には 酷い火傷の跡があった。
頭にはふたつ、角のようなものがぴょこりと生えている。
Aはもう、人間じゃなかった。
それが意味するのは、彼女は何らかの思いや憎悪が彼女の魂の形を変えて
なにか人ならざるものに変えてしまったということ。
「…A、」
自分がいなくなった後の10年以上の間に、何があったんだ。
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こんばんは、鯖原です。
この度は人参略を読んで下さってありがとうございます。
とんでもない時間に公開し始めましたね、勿論操作ミスです。
間違って全体公開してしまいました。
更新頑張ります…
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作者名：鯖原 | 作成日時：2019年1月24日 2時
