【オリオン】天狼の伴星【フロイ】

２１＝スペイン戦 ページ21

ロシア代表対スペイン代表の結果は占いで知っていた。


これは揺るぎなくフロイ達が勝つ。

フロイとベルナルド様の約束通り、介入のない実力で。




勝つ事を予め知っていて、一人で満足した気分に浸っていたのだけれど…





「(かっっっっこいい…!!!!!!)」





今日、初めてフロイのサッカー試合を見た。



ベルナルド様にパーフェクトスパークの試合を見とけって言われて、内心テンション爆上がりで、


浮だつ足取りでサッカースタジアムに来て…




試合開始早々、能面表情が保てなくなった。




後ろに待機していた執事に気づかれない様に表情を取り繕って「ちょっと…」とだけ言って部屋を飛び出た。




兎に角一人になりたかった。一人になって感情を爆発させたかった。


でも試合が見たい。と、思ってさっきの部屋よりフィールドの近い一般観客席の陰から試合を覗いたのが最後…








丁度、フロイがゴールを決めた場面だった。




「(かっこいいぃ…!!いのせんとどらいぶ?何今の、フロイ、かっこいい…!!)」




…恐らく、この時本当にだらしない顔をしていたと思う。



今まで試合をじっくり見れる機会なんて無かった。家で見ようにも執事やメイドに見ているのを見られたく無いから見れなかった。“すまーとふぉん”も持って無いから見れなかった。


こんなにフロイの近くにいたのに…今まで見れていなかったなんて、本当に、悔しい…!!




「っ……」




選手が活躍する度湧き上がる歓声、こんなに大きな声で熱があるなんて知らなかった。

サッカースタジアムのサッカーフィールドがこんなにも眩しくて、大きく見えるなんて知らなかった。




「(…フロイは、いつもこの中でサッカーをしてたんだ…)」




占い師は自分を出しちゃいけない。依頼者に人柄から先入観を抱かせ、表情から不安にさせる事もあるから。



フロイは、本当に楽しそうで…ボールを受ける度、シュートを決める度輝いていた。









「いいなぁ…」







………。


…私、今なんて言った…?


自分の口に触れて、首を傾げる。





その時、わあっと歓声が上がり、慌てて試合を見る。




「(あ…!またフロイのチームに得点が入った!)」




嬉しいなぁ、フロイ達が勝ってると。


フロイも嬉しそうで…私まで嬉しくなる。




「…!」




視界に光がちらついて、元を辿ると、観客がスマートフォンをフィールドに向けて撮影していた。




「……」




…大丈夫、私にはコレがある。

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