祝宴ノ始マリト葩ノ微笑 ページ46
中原 中也は或るBARに来ていた。
本来、此の時間は未だ店を開店する時間では無いのだが、特別に今日は一日中朝から開く事にしたらしい。
カラン......カラン......
「よォ、珍しいな。手前が朝から酒とは......」
「偶にはね? それに、私は此処が好きなのよ。貴方もでしょう?」
中に入ると、中原は既に来ていた女に視線を向ける。ぶっきら棒に「まあな」と返せば、彼はカウンター席に座る。BARのマスターの姿は無い、その代わりに彼が来る事を判っていたのか、卓には既に酒の入ったグラスが置かれていた。
丸氷に注がれた酒は、店の淡い電灯に照らされてキラキラと輝いている。隣に座る女の瞳と同じ琥珀色の酒は、中原が此のBARに来た時最初に頼む酒だ。其れを マスターは覚えていたのだろう。
中原の頭の中で、ニヤニヤと笑うマスターの顔が浮かび上がれば、地味に苛立ちを覚えた。
「飲まないの? 其のお酒、マスターが貴方にって作ったのに......」
「否、別に 飲まねェ訳じゃねぇよ」
「ふふ 中原さん、よく其のお酒を飲んでるものね」
グラスに手を伸ばし、彼は一口酒を飲む。隣に座る女もグラスに入った酒を静かに飲んでいた。互いに酒には強い方では無いのだが、時々無性に強いものを欲してしまう。
「......それで? 手前は如何して俺を呼んだ。須緒」
暫くの間、互いに黙って酒を飲んでいるだけだったが中原が口を開き、女の名前を呼ぶ。
「手前、仕事と
唯自分と酒を飲む為に呼んだ、そんな単純な理由な訳が無い。中原は白のドレスに身を包むAの姿を、深い海を思わす青の瞳に映す。
Aは微笑を浮かべると、唐突に中原との距離を縮め始めた。彼女の突然の行動に、中原は少し驚愕する。
酒が入った頭はクラクラして、身体が思う様に動かなかった。眩暈がする位の甘い花の薫りに惑わされる、彼女は蝶を誘惑する艶やかな華だった。
中原の頰に、彼女の白く滑らかな手が添えられる。瑞々しく熟れた果実を思わせる唇が近づけば、独りの男と独りの女の陰が重なった。
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ミサぽん(プロフ) - カエデさん» コメント有難うございます! いやいや、そんな......羨ましいだなんて、もっと上手くなりたいと思っている位ですよ、ですけど 有難うございます!嬉しいですっ (2019年7月7日 17時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
カエデ - こんにちは。読ませて頂きました。ミサぽんさんって絵がお上手なんですね!羨ましいです! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 611e70016f (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます!成る可く早い内に、続編を作成します。いつも読んでくださり、感謝感激です! (2019年6月16日 9時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - こんにちは。引き続き続編も楽しみにしております!笑 (2019年6月16日 9時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 初めまして!いつも!? え、え、有難うございますっ 楽しく!?...嬉しくて涙が出てしまいます。これからも更新、頑張っていきますね!感想、有難うございます。 (2019年6月9日 22時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年5月27日 11時