検索窓
今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:269,125 hit

祝宴ノ始マリト葩ノ微笑 ページ46

中原 中也は或るBARに来ていた。
本来、此の時間は未だ店を開店する時間では無いのだが、特別に今日は一日中朝から開く事にしたらしい。

カラン......カラン......


「よォ、珍しいな。手前が朝から酒とは......」

「偶にはね? それに、私は此処が好きなのよ。貴方もでしょう?」


中に入ると、中原は既に来ていた女に視線を向ける。ぶっきら棒に「まあな」と返せば、彼はカウンター席に座る。BARのマスターの姿は無い、その代わりに彼が来る事を判っていたのか、卓には既に酒の入ったグラスが置かれていた。

丸氷に注がれた酒は、店の淡い電灯に照らされてキラキラと輝いている。隣に座る女の瞳と同じ琥珀色の酒は、中原が此のBARに来た時最初に頼む酒だ。其れを マスターは覚えていたのだろう。
中原の頭の中で、ニヤニヤと笑うマスターの顔が浮かび上がれば、地味に苛立ちを覚えた。


「飲まないの? 其のお酒、マスターが貴方にって作ったのに......」

「否、別に 飲まねェ訳じゃねぇよ」

「ふふ 中原さん、よく其のお酒を飲んでるものね」


グラスに手を伸ばし、彼は一口酒を飲む。隣に座る女もグラスに入った酒を静かに飲んでいた。互いに酒には強い方では無いのだが、時々無性に強いものを欲してしまう。


「......それで? 手前は如何して俺を呼んだ。須緒」


暫くの間、互いに黙って酒を飲んでいるだけだったが中原が口を開き、女の名前を呼ぶ。


「手前、仕事と私事(プライベート)は分けるだろ? 今の時間は仕事の筈だ......それなのに態々 相容れない人間の俺を呼ぶのには、何かあるんだろ」


唯自分と酒を飲む為に呼んだ、そんな単純な理由な訳が無い。中原は白のドレスに身を包むAの姿を、深い海を思わす青の瞳に映す。

Aは微笑を浮かべると、唐突に中原との距離を縮め始めた。彼女の突然の行動に、中原は少し驚愕する。
酒が入った頭はクラクラして、身体が思う様に動かなかった。眩暈がする位の甘い花の薫りに惑わされる、彼女は蝶を誘惑する艶やかな華だった。

中原の頰に、彼女の白く滑らかな手が添えられる。瑞々しく熟れた果実を思わせる唇が近づけば、独りの男と独りの女の陰が重なった。

疑惑ト探リ→←知ラナイ頃ニハ戻レナイ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (130 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
399人がお気に入り
設定タグ:太宰治 , 文豪ストレイドッグス , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ミサぽん(プロフ) - カエデさん» コメント有難うございます! いやいや、そんな......羨ましいだなんて、もっと上手くなりたいと思っている位ですよ、ですけど 有難うございます!嬉しいですっ (2019年7月7日 17時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
カエデ - こんにちは。読ませて頂きました。ミサぽんさんって絵がお上手なんですね!羨ましいです! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 611e70016f (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます!成る可く早い内に、続編を作成します。いつも読んでくださり、感謝感激です! (2019年6月16日 9時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - こんにちは。引き続き続編も楽しみにしております!笑 (2019年6月16日 9時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 初めまして!いつも!? え、え、有難うございますっ 楽しく!?...嬉しくて涙が出てしまいます。これからも更新、頑張っていきますね!感想、有難うございます。 (2019年6月9日 22時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年5月27日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。