瞳ニ映ル世界ノ色ハ ページ44
「小僧だけではない。
事態は戦争を引き起こそうとしている。如何やら森は、探偵社も組合も、自分達に牙を向けるであろう敵対組織は徹底的に排除する心算の様だ。既に全幹部が動き出しているらしく、止める事は難しいだろう。
「しかし私はそなたの助命を嘆願し、特別に赦された」
尾崎は泉の事を“ 闇の花 ”と云った。泉は闇に生きる者、ポートマフィアに身を置いて、夜叉による暗殺を繰り返して来た彼女には光の世界は眩しく、生きにくいだろうと伝えている。
闇に咲く花は、闇の中でしか憩える事が出来ない。
「違う」
「............ !」
しかし、其の闇の花が自分を変えたいと強く願っていたら如何だ。
闇の中でしか生きる事が出来ない、尾崎の科白を否定したのは他でも無い泉自身だった。先刻迄、蒼白な表情で俯いていた彼女は顔を上げ、真っ直ぐな瞳で尾崎を見る。
「私は 闇の花じゃない」
若し以前の彼女だったら、尾崎の言葉に素直に従い、云われる侭ポートマフィアに戻って闇の世界で生きていただろう。だが、泉は明るく優しい世界を瞳で見てしまった。少し前は暗い影を落としていた瞳には、一筋の光が射し込んでいる。
彼女が変わろうと思えたのは、中島の救済があったからだ。最初に電車の車両爆破で対立をした時から、中島は何かと泉の事を気遣ってくれていた。そんな彼の優しい人柄に触れ、泉は闇から抜ける事を望み、明るい光を求める。
自分が決して、光で生きていけないと誰かに決められたくは無かったのだ。
「...... 恨むぞ小僧、あの子は光に目が眩んでおる。貴様が見せた光じゃ」
だが、尾崎は中島に対する怒りを増幅させる。尾崎にとって、泉は溺愛している可愛い妹分だ。そんな大切な存在が相反する世界に行こうとしているのを、黙って赦せる訳がない。
偽りの光に惑わされてはならないのだ。
「しかし幸い、まだ手はある」
ジャキッと向けられたものは、番傘に仕込まれていた刀だった。切っ先を中島の首の頸動脈に中て、尾崎は夜叉の様に冷酷な笑みを浮かべる。
金色夜叉の仕込み杖が腹部と柱を貫通していた中島は、全く抵抗が出来ない状態だ。
「小僧なき探偵社は さぞや居づらかろうて、そなたの所為で殺されたとあれば尚更」
「ぐ......」
冷たい刃が首を撫で、皮膚を少し裂く。
ポタリと血が流れ、中島が小さく呻いた時だった。
「待って」
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ミサぽん(プロフ) - カエデさん» コメント有難うございます! いやいや、そんな......羨ましいだなんて、もっと上手くなりたいと思っている位ですよ、ですけど 有難うございます!嬉しいですっ (2019年7月7日 17時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
カエデ - こんにちは。読ませて頂きました。ミサぽんさんって絵がお上手なんですね!羨ましいです! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 611e70016f (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます!成る可く早い内に、続編を作成します。いつも読んでくださり、感謝感激です! (2019年6月16日 9時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - こんにちは。引き続き続編も楽しみにしております!笑 (2019年6月16日 9時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 初めまして!いつも!? え、え、有難うございますっ 楽しく!?...嬉しくて涙が出てしまいます。これからも更新、頑張っていきますね!感想、有難うございます。 (2019年6月9日 22時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年5月27日 11時