穏ヤカデ優シイ時間 ページ34
「............は?」
思わず間の抜けた声が出てしまった。如何反応をするべきなのか判らず、少々困惑している私とは対照的に、太宰の方はニコニコと愉しげに笑っている。
「仰る意味がよく判らないのですが」
「私と
直球に言ってきたな。
間髪入れずに答えるものだから、呆れを通り越して最早尊敬してしまう。大した用でない楢ば、マンションに戻りたいのだが、近くに居た方が行動を監視し易いのも事実な訳だ。
本当だったら即効断りたい。
でも、私には特務課から与えられた仕事を全うしなければならないと云う社畜としての役割があった。戻るのは構わないだろうが、その分特務課の先輩達からの小言が酷くなるだろうし、給料を減額されるかも知れない。
「......行く場所に候補は?」
「じゃじゃーん」
行きたい場所は決まっているのかと尋ねれば、太宰は砂色の外套のポケットから二枚、チケットを取り出す。
「水族館......」
ヨコハマについ最近出来たばかりの場所だ。
何でも、施設の設備は全て最新。珍しい魚も沢山いるらしく、同僚の女の子が楽しかったと話していたのを覚えている。
チケットを一枚受け取れば、私は「行きましょうか」と相手に向かって言い、目的地を目指して歩き出した。
「嗚呼、待っておくれ」
「何です? 早く行かないと、時間が勿体......」
「偶には恋人____ 否 夫婦らしく、ね?」
科白を最後迄言い終える前に、太宰の大きな手が私の手を握ると指と指を絡めて来る。
所謂“ 恋人繋ぎ ”と云う奴だ。私は突然の事に驚き、目線を合わせる為に相手の方を見上げる。太宰は ふわりと優しい表情に成り、リードをするように一歩前を歩いたら「よし! 行こうか」と、歩き出した。
「............ッ」
あんな優しい表情、私は知らない。
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ミサぽん(プロフ) - カエデさん» コメント有難うございます! いやいや、そんな......羨ましいだなんて、もっと上手くなりたいと思っている位ですよ、ですけど 有難うございます!嬉しいですっ (2019年7月7日 17時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
カエデ - こんにちは。読ませて頂きました。ミサぽんさんって絵がお上手なんですね!羨ましいです! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 611e70016f (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます!成る可く早い内に、続編を作成します。いつも読んでくださり、感謝感激です! (2019年6月16日 9時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - こんにちは。引き続き続編も楽しみにしております!笑 (2019年6月16日 9時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 初めまして!いつも!? え、え、有難うございますっ 楽しく!?...嬉しくて涙が出てしまいます。これからも更新、頑張っていきますね!感想、有難うございます。 (2019年6月9日 22時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年5月27日 11時