【d!】Nightmare Cage【ﾛ兄鬼】 (ページ29)

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檻、弐拾玖ページ29

なんて無力なんだろう。
何も知らない、何も出来ない。異質な雰囲気が辺りを揺蕩う中、もうひとつ異質な雰囲気。
私はそれを知ってる。

「私……ここに居ちゃ、あかんの？」

ほろり、涙が一つ落ちた。
薄々気づいていた。
皆が纏う雰囲気が変わっていること、
手に取るように分かるし、
匂いが全然違う。

こうなったのは誰が引き金？
分からないけど、
私だ。

私が最初に赤い世界を作り出した。
否、作り出された。
でもそれは、運命だった。
私が、堕天してるとしたら納得はいく。
きっと皆は掻き乱されてるんだ。

「私が、押し付けたからや。」

「消えちゃいたい」

「もう、みんなに、迷惑かけたない」

「はよ帰ろうや、」

「でも、」

「――言いたく、ない。」

涙が、二つ、三つ、次々に零れ落ちて行った。
私は未だ、動けないままだ――。

.

もう幕を引いてしまいましょう。
私と同じ所になんて来なくていいのです。
来たら最後、色んなものに目を付けられる。

ただの一般人であるはずの皆が、そんな目に遭うのが耐えられないのです。
だって、

「――……××との、戦争ですよ。そう、紛れもなく、今から起こるのは地獄。彼が起こした、彼だけの、娯楽のための、」

――×××××、そんなもの、したくなかったのに。

「――本当、残酷ですわ、元に、戻してくださいまし。」

.

彼女は嘆く。
もうやめて、皆に手を出さないでと。

そんなの僕が聞き入れるわけないだろう？
実に愉快。晴れやかな舞台。

そして……僕の娯楽。全ては全て僕の掌の上だ。
僕は彼女、彼女は僕。否、僕は僕、彼女は僕の一部。
そうしたのは残酷な運命だったね。
でも、

「残念だね、アシュリー、僕は君が気に入っているんだ。幾らでも代わりはいるけど、僕が君を手放すことは無いよ。」

僕のお気に入りの女性、二人。
僕のお気に入りの×、一人。
僕の代わりは、……幾つだろうね。

「今後の展開を期待しているよ、アシュリー、そして、眷属となりし者たち。」

カチリ、歯車は回る。全ては交差し、残酷な運命は動き始める。全員を刺し連ねる刃となってでも――。