救出 ページ29
「はあ……いって〜……」
妖怪と対峙している平腹は、全身に走る痛みに思わず顔を歪める。
囮を申し出たのはいいが力の差は歴然だった。左腕と右足は完全に砕けており、立っているのもやっとだ。辛うじて動く右腕と左足を動かし、何とか凌いでいるが………もう限界が近づいていた。
「………斬島、ちゃんと逃げられたかな。イメルダ………」
脳裏に浮かぶ愛しい彼女の笑顔。胸に熱いものが込み上げて来る。
「俺が死んだら、泣いてくれるのかな……まあ、獄卒だし、死なないけどさ……」
ーガアアアァ!!ー
思い更けっていた平腹に妖怪が襲いかかる。平腹も避けようとするが、さっきまで動かせていた手足が動かず、よろけて座り込む。出血が酷く深刻な貧血状態となってしまったのだ。
「やべ………もうダメかも………ごめんな……イメルダ…」
ーガアアアァ!!ー
妖怪が鋭い爪が付いた腕を振り上げ平腹に降り下ろす……その時だった。
ーバン!!バン!!ー
鋭い銃声が響き渡る。平腹はゆっくりと目を開けて後ろを振り返ると、拳銃を構えた佐疫がおり、その背後から田噛と谷裂、斬島が飛び出して行く。
「ちっ…………手間掛けさせやがって……」
「俺達を無視するとはいい度胸だ!!」
「平腹、遅れて済まない。後は俺達に任せろ」
三人が平腹の前に躍り出て臨戦体制に入ると、驚きと嬉しさで放心状態の平腹に駆け寄る人物がいた。
『平腹さんっ!!』
「イメルダ………」
『平腹さん………っ!!』
「ふぉ!?」
平腹をきつく抱き締めるイメルダに平腹はわたわたしたが、優しく彼女の体を抱き締める。
『平腹さん、間に合って良かったです』
「うん、ありがとな」
『平腹さん……こんなに血が………』
「大したことねぇよ」
満身創痍の平腹のあまりの痛々しさにイメルダは涙が溢れた。平腹はそんな彼女の涙を指で拭い取り、いつも通りニカッと笑う。泣いて欲しくない、笑ってほしい。その想いが通じたのかイメルダも微笑み返す。
「俺は獄卒だし、すぐ治るからさ。心配しなくても大丈夫だぜ。それよりイメルダが無事で良かった。お前に何かあったら俺………」
目を伏せうつ向く平腹の顔を、イメルダは優しく挟み込み目線を合わせる。
『平腹さん、ありがとうございました。私はもう大丈夫です。だから………』
イメルダはそう言うと平腹から離れ、鞭に手を掛け、三連の首輪を手に取る。
『今度は私達が貴方を護ります』
そう言うと、イメルダは平腹に振り返り笑い掛け、四人の所に駆けていった。
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柊羽(プロフ) - 月華さん» ありがとうございます!!これからも駄文ですがコツコツ更新していきますので、よろしくお願いいたします。イラストへのコメントもありがとうございます。 (2016年7月4日 8時) (レス) id: 9a8d1a9239 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - ていうか画力が神ですね!尊敬します! (2016年7月3日 13時) (レス) id: 733f44e5a8 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - すごい大好きです!応援してます! (2016年7月3日 13時) (レス) id: 733f44e5a8 (このIDを非表示/違反報告)
柊羽(プロフ) - リンカさん» ありがとうございます。拙い文章ですが、楽しんでいただけて嬉しいです。 (2016年3月28日 19時) (レス) id: 9a8d1a9239 (このIDを非表示/違反報告)
リンカ - 凄く面白いです!! 更新頑張って下さい! (2016年3月28日 14時) (レス) id: bf716977a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊羽 | 作者ホームページ:http://nanos.jp/ys3127/
作成日時:2016年3月22日 19時