透明少女と彼女の人外【ライラ】 ページ6
正確な読みは多分違うが、確かそんな名前だったはずだ。この人外も真っ黒だしぴったりだろう。
……後から調べてみれば予想通り間違えていたのだが、一字抜かしでアレンジしたということにしておいた。
ちゃんとその綴りでそうとも読むようだし、大丈夫。
十歳児のネーミングセンスなんてそんなものだ、きっと。
私が特別下手だったわけではないはずである。
果たして彼、もといガスパーの反応はと言うと、だ。
「おお! ガスパー!! いいぜ、オレはガスパーだ!」
とりあえず喜んでくれたようだ。私はほっと胸を撫で下ろした。良かった、良かった。
そんな風に安堵のため息をついた私をガスパーがじっと見つめている。私は首を傾げた。
「どうしたの?」
「オレはガスパー。なら、お前のナマエ……名前は?」
合点がいって、ああ、と私は頷く。確かに私も名乗っていなかった。
「私の名前はライラだよ」
ファミリーネームを言うのはやめておいた。
ようやく名前の概念を覚えたばかりのガスパーを混乱させるといけないから。
「ライラ」
「うん、そうだよ。よろしくね」
「ヨロシク?」
「あ、えっと、よろしくって言うのは……」
私たちの会話は万事その調子だったが、嫌な感じはなかった。
人間のこと、特に対人関係に殊更無知なガスパーの質問の答えに窮することはあったが、それすらも楽しいような気がしていたのだ。
そう、事実楽しいことばかりだった。
人外ならではの思考はとても興味深かったし、まだまだ子供な私にとって、ガスパーというのは良い遊び相手だった。
その気になればお姉さんにだってなれる。
苦慮しながらも先生ぶってガスパーに色々教えるのは面白かった。
だから、つい忘れていたのだ。
ガスパーと出会ったきっかけがなんだったか、私にある“人とは違う部分”が一体何なのかを。
忘れていては覚悟も出来ない。
それはそんな折に起こった出来事だった。
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作者名:氷渡ミオ | 作成日時:2018年9月14日 23時