Mysterium historia -ミュステリウムヒストリア-【派生作品】 (ページ2)

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透明少女と彼女の人外【ライラ】ページ2

ガスパーに出会ったとき、私は十歳だった。
五歳の時分、初めて他者に認識されなくなった私はそれからも時折姿を消した。
二度目が起きたのは初めから半年ほど経った時のことで、三度目はその半分の三ヶ月後だったように思う。
恐ろしいことに間隔が短くなっていっている。
姿が消える時間も回数を重ねる毎に伸びていったが、全く嬉しくなかった。
何せそれは私の意思に反して発動するのだ。

私はその状態に陥ると、自分が世界から弾き飛ばされたような気がする。
私には見えているのに、他者に私は見えない。誰にも何にも反応されない、透明。
それは私の精神をすり減らした。……もう、人から無視されるのはうんざりだった。

私が人前に姿を表せる時間は段々と短く、姿を消している時間は比例して長くなった事は上に述べた通り。
数時間、半日、丸一日……伸びに伸びて、ついに三日ほど人と話せていなかった時、ガスパーに出会ったのだ。

私は人との会話に飢えていた。
姿が消えるという特殊性が無くとも、家族からは厄介払いされて、引き取られた養父は自分の研究に頭がいっぱい。
そんな状況で思春期にも入っていない幼女が、寂しがらないことがあるだろうか？いや、ない。
少なくとも私は違った。
まあ、両親は置いておくとして、養父は私という一人の子供のことを気にしていなかった訳ではないと思う。
ただそれ以上に、私の体に宿る能力が興味深かっただけで。
幼い子供を広い屋敷に一人放置する気はなかったのだ。
これまで一人で暮らしていたから、その調子で研究に没頭してしまったのだと、私は認識している。
これは私の想像ではない。
週に一度家の掃除に訪れる家政婦さんに、私が極度の空腹で倒れているところを発見され悲鳴を上げられた後、部屋を訪れた時の表情で少しは分かるというものだ。
引き取られたのが家政婦さんが来る曜日の前日で良かったと心底思うし、今でもあの所業はないと断言できるが。

そんな養父との生活も四年続けたことで慣れて、止むに止まれぬ事情により家事スキルも育ったが、先に述べた通り寂しさは常に感じていた。
それには到底慣れることが出来なかったし、そうしては駄目なものだと思うのだ。
そういう状況が積み重なった状態で、私は三日間人から認識されていなかった。

誰でもいいから私を解(わか)って欲しい。

そう狂おしいほどに思っていたので、あんな怪しい風体の男に話しかけたのだと思う。