透明少女と彼女の人外【ライラ】 ページ9
「ぅえっ、ガスパぁのばか!!」
ついにはそんな風に声を上げて泣いてしまったりして、結局一時間ほど埃っぽい部屋の隅で話をしていたと思う。
それくらいになると、ようやく私の泣き虫も落ち着いたようで、ガスパーから離れられた。
と、言っても密着状態から離れたというだけで、その後はご飯も寝る時もトイレ以外はガスパーの傍にいたし、彼もいてくれた。
やけに甘えてしまったのが少し恥ずかしいが、私が大丈夫と言っても離れてくれなかったのはガスパーだ。私のせいじゃない。
勿論、必要じゃなかったとは言わないが。彼が傍にいるのはとても安心出来ることだったから。
そんなことがありながら、今までを共に過ごした。
例のことが起こるまでは家を離れようとすることもあったガスパーだが、あれがあってからは基本的に私の隣にいてくれた。
そのことが嬉しいものから、落ち着くもの、いて当たり前であるものに変わるまで、八年というのは妥当な時間だったと思う。
将来、学院を卒業して、誰と結婚するにしても、私が消えてしまいそうな時隣にいるのはガスパーなのだ。
そう、思ってしまうぐらいには、私はあの人外をどうしようもなく愛してしまっているのだと思う。
恋でも、ましてや家族に向けるそれですらない、もっと別の何かで。
でも、私からあの人外に愛を求めることはないだろう。
勿論、くれるものなら貰いたいという程度の欲は持ち合わせているが、それだけ。
拾い主ということで何かを感じてくれているのか、彼は私に優しいが、人外なのだ。
本来たまに姿を消す程度の特殊性しか持ち合わせていない小娘が友人になれるような、そんな生半な存在ではない。
ましてや恋人なんて推して図るべし、だ。
あの人外が愛とは何かを把握しているかも怪しいと思う。
無論、それはガスパーを侮っているからではなく、彼は純正の人外であり、不定形の怪物で、人間にほど近い姿を持つ獣人やらとは違う、人を模しただけの存在だから、という話だ。
それが自我を持つということすら奇跡に近いということを、私は忘れてはいない。
彼が私の傍にいるということも、この上なく幸運なことだ。
だからそれ以上は望まない。
望んでしまったらバチが当たるだろう。
それでガスパーを失ってしまったら堪らない。
なんたってガスパーは私の“最初”なのだから。
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作者名:氷渡ミオ | 作成日時:2018年9月14日 23時