16話 ページ16
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不破湊side
頷いてくれたAちゃんに安心して、俺は話を続ける覚悟を決めた。
「好き。」
たった一言そう告げると、彼女は目を見開いた。
そして、涙を流す。
その光景を見て、胸が締め付けられるように苦しくなった。
「好きだよ。Aちゃんのこと。なんでかわかんないけど、初めて会った時から惹かれてた。だけど、この気持ちを伝えたら、Aちゃんが離れていくような気がして……嫌われるのが怖くて、言えなかったんだ。」
Aちゃんの瞳からはポロポロと大粒の雫が流れ落ちる。
その姿を見ていると、愛おしさが溢れてくる。
本当は、もっと早く伝えていればよかったんだ。
そうすれば、彼女が泣くことも無かったかもしれない。
彼女の涙を袖で拭うと、優しく抱きしめる。
そして、耳元で囁く。
「愛してるよ、Aちゃん。」
Aちゃんは俺の腕の中で静かに嗚咽している。
その背中をさすりながら、落ち着くまでずっと抱きしめ続けた。
しばらくして、落ち着いたらしいAちゃんが口を開いた。
『湊くん……私ね……自分が大嫌い。』
唐突に放たれた言葉に驚いてしまう。
だけど、次の瞬間、その理由を察することが出来た。
ああ……そういうことだったのか……
きっと、Aちゃんは自分のことが許せないのだ。
自分を責め続けて生きてきたんだろうな。
そう思うと、どうしようもなく切なくなった。
俺は何も言わずに彼女を抱きしめ続ける。
きっと今の彼女に告白の返事は無理だろう。
だから、今は待つことにした。
その代わり…
「Aちゃん、俺と夏祭り行こ。そこで花火でも観よう。2人で綺麗なもの沢山見つけて、楽しい思い出いっぱい作って、辛いこと全部忘れちゃおう。それで、いつか答えが出たら教えて欲しい。それまで待ってるから。」
少しでもいいから、君に幸せを感じてほしい。
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作者名:おふとん天使 | 作成日時:2023年7月11日 8時