🌕EP.138《暴走》と掃除の鬼と ページ37
そしてそのまま、
兵長の目の色って、黒のようなグレーのような少し青みがかった色なんだな、綺麗だな、この色にはどんな眼鏡が似合うだろう？
などと思いながらジィーっと見ていると、
── 目の前の顔の眉間にみるみるうちに皺が寄りだした。
……は、しまった。
あまりの衝撃に我を忘れていた。
急激に現実へと引き戻されると、頭から血の気がサーっとすごい勢いで引いていくのを感じる。
こ、これはやらかした。
今、私は何をやっていた？
そして、なぜにこうなった。
自分でも、もうわけがわからない。
── 怒られる。
瞬間、私はがっしりと両脇を抱えられ兵長から引き剥がされた。
「おま！バカか！？」
エレンが慌て、
「ご乱心！？ご乱心ですか！？A！？」
サシャが青い顔をし、
「ある意味お前が死に急ぎ野郎か！？」
ジャンが怒鳴る。
「ほんと、そういうとこだからな！！A！！」
コニーは呆れながらも強い口調でそう言うと、
兵長を殴ったヒストリアですら、アワアワとし、ミカサは良くやったという表情で頷いた。
そして、
「兵長！すみません」
こちらも青ざめながら謝るアルミン。
兵長は舌打ちをすると、私達の近くに姿を現して笑いを堪えているアーチャーに向かって
「オイ、赤いの！自分の主人の躾けくらいちゃんとしておけ！」
と、怒鳴った。
「いや、済まないな。だが、知らなかった事とは言え、マスターのツボを押してしまった兵士長殿にも責任はある」
まだ微妙に肩を震わせつつ、切り返すアーチャー。
「それから、言い忘れていたが、マスターは、たまに暴走する。悪いが、タチの悪い小動物にでも絡まれたと思って諦めてくれ」
笑いもひと段落したようで、やれやれと言った様子で肩を
その後、その場の雰囲気に何か危険な物を感じ取ったのかエレンが、
「と、と、とりあえずコイツにはしっかりと反省させときますんで。し、失礼します」
と早口で言い、素早く私の手首を引っ張ると廊下を高速で戻っていく。
エレン、ありがとう。助かった！
── 私は心の中でそう叫んだ。
……しかし、そのまま怒られずに済みましたとはならないもので、結局夜には兵長に捕まり、無言でお掃除セットを渡された私は、それから空が白むまでの間、ひたすら兵舎の掃除をやり続ける事になったのだった。
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作者名：kokubyaku | 作成日時：2019年8月6日 23時
