どんぐり オン ザ デスク【嘴平伊之助】

よっつ ページ5

伊之助くんとは、殴られたし嫌われたのかと思っていたけど、そんなことはないようで、その後も頻繁に話しかけられるようになった。

あ、殴られた事は母の心で許してあげた。

ある日は教室の窓から、

「おいA！見ろ、ダンゴムシだ！」

と獲物を見せられた(猫が飼い主にネズミを持ってくるような、そんなイメージ)り、またある日は、

「A！見ろ、校長のヅラだ！」

「！？コラ！返してきなさい！！」

だったり。

そこそこ仲が良いと私は思っていた。

けれど、夏休みは一度も会わぬまま二学期になって、伊之助くんは私に話しかけることが無くなった。

それどころか、私が話しかけても、すぐに走り去っていってしまう。

いつの間にか、親分子分の関係は消滅してしまっていたのだ。

すごくショックだったけど、十月になって、いい加減吹っ切れた。

人間誰でも飽きる事は飽きるし、それは私にはどうすることも出来ない。

伊之助くんとの復縁(親分子分の縁の復縁)は諦めよう。

そう思っていた矢先、先程のアレだ。

なんで殴られたんだろうとか、なんでどんぐりを毎日机の上に置いたんだろうとか、いろいろ思った事はあるけど、久しぶりに話せて嬉しかったってのが一番だ。

また前みたいに話したい、なんて。

「はは、全然吹っ切れてなんかないじゃん」

机の上のツヤツヤしたどんぐりを人差し指でつついた。

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