プリンが6個 ページ6
バルコニーもあるのに、わざわざ下まで降りてきた理由は一つ。
体が大地を求めていたからだ。
もう一度言おう、体が大地を……
『夜はまだ過ごしやすいな…』
マスクを少し引っ張って顔との間に空間を作る。過ごしやすいと言っても夏だ。暑いに決まってる。でも、今晩は風が心地よいくらいに吹いていた。
前髪の隙間から夜空を見上げる。月が綺麗に輝いていたが、前髪のせいで少し曇って見えた。前髪を除けたかったけど外でそんなことする勇気はまだない。
玄関前の階段に座って足を伸ばす。たまには夜を堪能するのも悪くないだろうが、やはり考えすぎたことによるモヤモヤが気になって気分は晴れなかった。
どんどん低くなる自己肯定感に嫌気が差す。メンタル弱いのにかっこいいからってヒーロー目指してよかったんだろうか。たまたま強固性を持っていて、勉強も親に言われるがままにやっていたからそれなりにできた。だから雄英という難関校に受かった。全ては親のおかげである。親孝行したい気持ちもあるけれど、それイコールヒーローではないな、とも思った。
『あれ、私かっこいいヒーローになんてなれるのかな』
ポロッと零れた言葉は風に乗って消えた。
ヒーロー科のみんなと無意識に比較してしまう。ああ、どうしよう…
「ん、あれ、A？」
『ひャッ』
背後から名前を呼ばれた。びっくりした。
ゆっくり振り返ると最近よく目で追ってしまう黄色い頭が。
「ごめ、驚かせた？」
こんな夜更けにどうしたん、そう続ける彼は私の数段下の階段に座ってこちらを見上げる。
え、そこ座るの？まって？見上げないでもらっても？
やけに眩しい月明かりのせいで目を見透かされてしまいそうだった。ふいっと顔を逸らす。
「あー、大して話したことない奴に聞かれても困るよな。じゃ、また明日な。早めに戻れよ」
彼の言葉につられて上鳴くんの方に顔を向け直す。その瞬間、ブワッと強い風が吹いた。
『う、わッ』
普段風の影響で目が見られないようにスプレーでガチガチに固めているはずの前髪がふわりと舞う。
お風呂上がりなの忘れてた！
「え、」
無駄に長い髪を元に戻すのはそれなりに手間取って、その間に目が合ってしまった、気がする。どうしよう。
「あの、さ」
急いで前髪を整えて手で抑える。もう飛ばないようにしっかりと。
緊張感漂う空間に耐えられずにぎゅっと目を瞑る。
「俺と、会ったことあるよね…？」
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とろん(プロフ) - 紺。＠水分補給さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！まったり更新していきますので気長にまっていただけると嬉しいです^ - ^ (2021年10月17日 23時) (
レス) id: 44d692106b (このIDを非表示/違反報告)
紺。＠水分補給(プロフ) - はぅわ…めちゃめちゃ好みです…！なんか、その、(語彙力皆無)とにかくめちゃ面白いし、神作確定ですね！もっと伸びてぇぇぇ！！応援してます！無理のない範囲で更新頑張ってください！ (2021年10月17日 2時) (レス) @page11 id: 8376f1dee6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とろん
| 作成日時：2021年10月13日 19時
