教訓 ページ31
腹の底から出たようなため息をつきながらも仕方なくテレビを消し、和室にいるおじいちゃんに用事が入ってしまったことを伝える
「気を付けなさい」と言いながらお茶を啜っているお爺ちゃんの後ろ姿は全てを悟っているようで、深くは聞いてこなかった
本当は自分勝手すぎる彼に対して文句の一つでも言ってやりたい所だけど、言ったところで万次郎が改める訳がないので言うだけ無駄だと早々に諦めるのが吉。因みにこれはお爺ちゃんから授かったありがたい教訓です
「呼び出すなら朝家を出る前に教えてくれればよかったのに…」
自分の部屋に戻って、化粧台の上に置いてある愛用の日焼け止めを手に取る。この前買い忘れた時エマの使っているものを借りたら肌が真っ赤になったので、私は死ぬまでこの子と生きていくことに決めている
全身にムラなく塗れたら、UVカット仕様の薄い上着をクローゼットから取り出す。そしてチャックを開けて裾に手を通そうとした時に、ふと自分の白い二の腕に目が行った
両親が死んでから何年経ったのか、そんなの数えていなければ、数える意味もないので正確にはよく分からない
あれだけ身体中にあった痣の跡はだんだんと薄くなっていて、今ではよく見ないと分からない程度にまで治っている
勿論それは私にとって喜ぶべきことのはず。エマと一緒にお風呂に入れるようになったし、家の中では半袖で過ごすことも出来るようになった。それなのに痣の消えた自分の腕を見ていると、私は時折とてつもない喪失感に襲われるのだ
それは恐らく、私と両親を繋ぐものが自らの身体に残る痣だけだったから
私の体に残る傷跡は、父に受けたものであり、それを母と一緒に耐えてきたという証。私にとって両親が確かにこの世に存在して、一緒に日々を過ごしてきたことを実感できる唯一の物だった
そして痣を見るたびに、真一郎が体に少しでも跡が残らないようにと色々な種類のシミ消しの薬を探し回ってくれたのを思い出す
私の心は真一郎が死んだあの日に止まったまま
それなのに体の痣はどんどんと消えていって、前に進めて居ないのは私の心だけだと、いやでもそう実感してしまうからか、未だに自分の体を見るのが好きでは無かった
玄関の外からは独特な排気音が聞こえてくる。鞄を手に持ちベットから立ち上がった私はなんとなく自分の両頬を叩いてみた
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Yun yun(プロフ) - 腐腐腐さん» コメントありがとうございます!これからも更新頑張りますね!(^^) (2021年9月23日 22時) (レス) id: 81736f4f89 (このIDを非表示/違反報告)
腐腐腐 - めっさ好きです!続き楽しみに待ってます! (2021年9月23日 17時) (レス) @page48 id: c7cac8184e (このIDを非表示/違反報告)
Yun yun(プロフ) - snj78_さん» 変換し忘れていた部分があったみたいです。すみません(~_~;) 気付いた部分は直したのですが、他にも変換出来ていない部分がありましたらまたコメントして頂けると助かります! (2021年9月20日 22時) (レス) id: 81736f4f89 (このIDを非表示/違反報告)
Yun yun(プロフ) - クリスさん» コメントありがとうございます!その一言だけで一万文字は書けます…笑これからも頑張りますね! (2021年9月18日 22時) (レス) id: 81736f4f89 (このIDを非表示/違反報告)
クリス(プロフ) - 面白すぎます!続き楽しみにしてますね! (2021年9月18日 21時) (レス) id: 6dab28c1fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Yun yun | 作成日時:2021年9月13日 16時