Forevermore (ページ27)

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‐大阪府内大学病院‐

『・・・結弦くん？』

　電話を切ってからすぐにNHK杯が開催される大阪まできた。

出来る限り急いだけど、結弦くんに電話をもらってからすでに3時間近くが過ぎていた。

結弦くんは病院の待合室の目立たない所にうつむきながら座ってた。

その姿はいつもの自信に満ちた羽生結弦じゃなくって、何かに怯える普通の22歳の男の子だった

「A、ごめん、急に。」

『わたしは大丈夫。それより足は？』

わたしが声をかけると、ゆっくりと顔を上げてくれるけど、その目にいつもの力強さはなくって

自分が一生を賭けるとまで言ったオリンピックが危なくなるこんな状況でも、わたしの事を気づかう結弦くんに泣きそうになる。

「検査する前に痛み止めもらったから。それでちょっとマシになった。」

『そっか、でも完全にはとれないんだね。』

「怪我してすぐは歩くのもきつかったけど、今は歩けるから。」

怪我した状況を説明してくれるけど、スケートの事は全く分からないわたしはただ黙って頷くしかできない。

『検査の結果は？』

「まだ聴いてない。もうすぐ呼ばれると思うけど」

待合室で待っている時間は2時間か3時間かそれ以上に長く感じたけど、時計を見るとまだ着いてから15分も経ってなかった。

いつもは口数の多い結弦くんが一切喋らずうつむいている事が、怪我が深刻だという事を嫌でも私に実感させる。

でも、この状況で1番辛くて泣きたいのは結弦くんなんだから

わたしが泣いたら、この怪我の事で結弦くんは泣けなくなる

2人一緒に落ち込んでたら、2人一緒にいる意味がない

呼ばれるまでの間、わたしは自分にそう言い聞かせた

どちらも言葉を発しないまま20分ぐらい待っていると、落ち着いた雰囲気の白衣を来た男性がわたし達の前で立ち止まった。

医師「羽生さんですね？診察室2番にお入りください」

周りと同じように名前をアナウンスしなかったのは、周囲に羽生結弦だと気付かれるのを防ぐため

わざわざ小声で呼びかけて順番を知らせてくれた事が有り難かった。

医師「検査の方お疲れさまでした。診察を担当する大野と言います。

こちらが先ほどの検査で取らせて頂いたレントゲン CT MRIです。

レントゲン上は骨に外傷を認めませんが、その他の結果から

右足関節外側靭帯損傷と診断しました。」