あらしのよるに１ ページ33
.
暗い部屋の中
びゅーびゅーと吹き荒れる風の音
窓ガラスに打ちつける激しい雨の音
それらに混じって聞こえるか細い喘鳴
「…っ！！」
耳に届く音の正体に気付いた途端、夢と現の境を揺蕩っていた意識は、一気に覚醒へと引きずり上げられる。
「…ごろくんっ！？」
二段ベッドの梯子を慌てて降りながら声をかけるも、返ってくるのはより酷さを増した咳と喘鳴だけ。
四郎は素早く下段に潜り込むと、亀のように丸まった五郎の背中を摩りながら、枕元を探り彼のスマホを探し出す。
ライトを付けて五郎の顔色を確認すると、こちらはすぐ目につく場所に置かれた吸入器を手に取った。
「ごろくん、吸える？」
四郎の問いかけに応えるためか、何とか身体を起こそうとしているが、なかなか力が入らないようだ。
四郎は一度手に持っていた吸入器を脇に避け、五郎の肩に手を添えると、上半身を持ち上げるように身体を起こす。
そしてそのまま五郎の背をベッドヘッドに凭れさせた。
「咥えて……いくよ？いち、にの、さんっ」
「……っゲホッゲホッ」
「もっかいいくよ？いち、にの、さんっ」
吸入器を五郎の口に咥えさせ、声をかけながら薬を吸わせる。
もう何度もやってきたことだ。
慣れたい訳ではないけれど、手際はかなり良くなった。
毎年この梅雨時期は、彼にとってどうしても苦しい時間が多くなる。
日本の上空に居座り続ける低気圧とじめじめとした気候に、昼夜問わず身体が悲鳴を上げる。
青白い顔で苦しげな呼吸を繰り返す弟の横で、医者でもない自分は何もしてやれることがない。
それがどうしようもなく歯痒い。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 154人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にひひ - とっても面白かったです！ありがとうございました。 (2020年8月1日 7時) (
レス) id: 6032ca778f (このIDを非表示/違反報告)
はちこ(プロフ) - にひひさん» お待たせして、申し訳ありません。ご希望に添えたかどうか不安ですが…リクエストありがとうございました。 (2020年7月31日 18時) (レス) id: fdcdcf1450 (このIDを非表示/違反報告)
にひひ - リクエストです。雨の日に発作が起き家の治療でも治らず病院へ発作が収まり家に帰るとまた発作がというお話をお願い致します。発作はどっちも大きいものでお願いします (2020年7月24日 17時) (レス) id: 6032ca778f (このIDを非表示/違反報告)
はちこ(プロフ) - にひひさん» ご期待に添えるものが書けるかどうか分かりませんが、それでもよろしければリクエストお受け出来ます。 (2020年7月23日 21時) (レス) id: fdcdcf1450 (このIDを非表示/違反報告)
にひひ - リクエストいいですか？ (2020年7月23日 15時) (レス) id: 6032ca778f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はちこ | 作成日時：2020年4月23日 20時
