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やっと、終わったんだ。
自分が膝からガクッと崩れ落ちるのがわかる。
意識を失ってまで技を繰り出し続ける実弥は悲鳴嶼さんに止められていた。
ふっ、と我に返って力を振り絞り、一目散に駆け寄ったけど、
転がっている無一郎はもう息をしていなくて。
『無一郎、ねぇ無一郎…。』
聞こえていないとわかっていても。
返事は返ってこないとわかっていても。
『勝ったよ。ねぇ、無一郎…!』
無一郎がいなかったら勝てなかった。
わたしが生きているのも、無一郎との稽古があったから。
それでも、無一郎には戦闘には関わらずに、好きなものを食べたりして、
とにかく、笑って生きていてほしかった。
そんなこと言ったら怒るかな…?
上半身だけになったその軽い背中を抱き締める。
いつも飛びついて来てくれる無一郎。
最後に感じたあの温もりはもうない。
とびきりかわいい無邪気な笑顔も。
拗ねたようにむくれた顔も。
もう、会えないんだ。
幸せだった、と言ってくれた。
わたしも、無一郎と過ごす時間は、
笑顔に溢れていて本当に幸せだった。
玄弥くんも、灰となって消えてしまっていた。
たくさん一緒に笑って、たくさん一緒に悩んだ玄弥くん。
どうか、実弥に思いを伝えられていることを祈る。
ニカッと笑うかわいい笑顔を思い出して胸が苦しくなる。
実弥は、壊れたように泣いていた。
守れなかった。
覚悟を決めていた二人だったけど、
それでも、命を懸けて守りたかった。
声を上げて泣いていると、
ふと、無一郎ごと悲鳴嶼さんに包まれる。
行「A、よくここに来た。
そして自分と向き合いよく頑張ってくれた。」
『ひ、悲鳴嶼さんっ』
行「少し、休め。まだ鬼舞辻無惨が残っている。
私は先に向かう。」
『っいえ、行かせてください。』
行「このままだとA、君も失血死する。」
『みんな命を懸けてるのに、自分だけなんて、嫌ですっ』
行「君の気持ちはわかっている。少しでも回復してから来て欲しいだけだ。
まだ夜明けまで時間がある。
呼吸を整えろ、傷を縫え、まずはしっかり止血をしろ。」
『っはい。』
そのまま実弥の元に行く悲鳴嶼さん。
ゆっくり立ち上がる実弥。
もう、行くのだろう。
心中を思うと胸が張り裂けそうだ。
また涙が溢れる。
わたしも早く行かなくちゃ。
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金平糖 - うぅ...感動しました... 一気読みしたんですが、一気読みしたからこそ凄く感動しました。こういう系の話には弱いので、、、 (2021年10月2日 23時) (レス) @page45 id: f3f7dadf62 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 不死川の夢小説少なかったのでとても嬉しかったです!出来れば続編も読みたいです、お願いします。一つ…鬼舞辻が鬼゙無゙辻になってたので、そこは直して頂きたいですね。 (2020年12月11日 7時) (レス) id: cedaea8f17 (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - ろこもさん» 完結おめでとうございます!素敵な作品でした!実弥と夢主が幸せになれて良かったです(はぁと)ろこもさんも大好きです!ありがとうございました! (2020年8月7日 5時) (レス) id: abbc87cbf8 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 我妻ライさん» 我妻ライ様!返信遅れてしまいすみません!絶叫嬉しい限りです!元気が出て頑張れました!!読んでくださりありがとうございます! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - かぼさん» かぼ様!返信遅れてしまいすみません…!一気読みありがとうございます!実弥さんを表す文章力が足りませんが、より好きになるお手伝いができれば嬉しい限りです…ありがとうございます…! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろこも | 作成日時:2020年7月7日 22時