ラブセレナーデ16

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どうしてだろう



たくさんの話し声や笑い声が響く空間なのに、篤人の靴音がわかる


篤人がこちらに一歩一歩近づく度、空気が優しく揺れる


コツン。コツン。


篤人の靴音。篤人の空気。


それを感じようと、体が勝手に神経を研ぎ澄ませてしまう。







ヒョコっと柱から顔を覗かせた篤人。


トクン。と高鳴った心に、あぁ。こんなに逢いたかったんだ。と、愛おしさで胸が苦しくなった。





篤人の茶色い目が、私を捉えた。


一瞬だけ驚いた目が、優しく優しく色を変えていく。


そんな優しい篤人の表情に、また心がトクントクン。と動く。

トクン。と、幸せな音を奏でる。

幸せな時間を奏でる。






晴「2連休だから東京に来てたんだけど、ウッチーが美味しいお酒を飲ませてくれるって言うから、わざわざここに来た。

麻也の長い長い顔パスのお陰で、侵入成功」





晴の言葉に、フっと笑う篤人が、あぁ。愛おしい


逢いたかった。逢いたかった

逢いたかった




その私の気持ちを、お酒のせいにして届ければいい。









A『旦那さんに逢いたくて、来ちゃった 笑』


言葉に出したら、また愛おしさが積もった。





再びフっと笑った篤人。


そんな篤人を、晴が「ウッチー。Aに逢いたくて堪らなかった〜！！って顔してる 笑」と、笑った。







違うよ、晴


私が逢いたかったの

私の方が逢いたかったの






晴「旦那さんに逢えて良かったね、奥さん 笑」




晴が笑う。

篤人も照れ臭そうに笑う。

麻也も笑う。

私も、嬉しくて、幸せで、笑う。





4人掛けのテーブルで、篤人が迷う事無く私の隣に座るのが嬉しくて

目が合っただけで笑ってくれるのが嬉しくて

テーブルの下でコッソリと私の手を握ってくれるのが嬉しくて

手を握ったまま、指先で私の手の甲を優しく撫でてくれるのが嬉しくて

動くたびに篤人の香りが届くのが嬉しくて



篤人がいるだけでこんなに幸せで、赤くなった顔はお酒のせい。と誤魔化せるかな




たった2週間しか離れてないのにね

こんなにも、愛おしい。







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4人で話していると、篤人を探しに何度か人が来た。


そのほとんどが、可愛い女の子。



「あれ？どなたさん？」と聞いてくる女の子達に、篤人は「秘密」と答え

「私も一緒にいいですか？」と聞いてくる子に、「あ〜、遠慮願います」と答え




テーブルの下でこっそりと握られた手は、一度も離されなかった。

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