ラブセレナーデ16

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ピ。とiPhoneを切り、Aの華奢な手を握り直す。






俺よりも随分小さく、華奢だけど柔らかい手


死ぬまで、いや、死んだ後も、ずっとずっと俺が守る手


来世も絶対に繋がっている、手








ふと、煙草の香りがした


勿論周りには誰もいないし、煙草の香りは一瞬だけで、すぐに消えた

煙草の香りを感じた時に見えたのは、小さな窓から見える月

それと、喉に残る強い酒の感覚

指先に触れた、優しくて愛おしい温もり



それらは全て一瞬で、消え去った。






もしかしたら前世の記憶かもな。なんて、柄にも無く思った自分に、笑った。


笑ったけど。きっと前世も俺とAは一緒だったんじゃないか。とも思った。

いや、きっと。なんかじゃなく、絶対に一緒だった。


輪廻転生って本当にあるのかもな。なんて、やっぱり柄じゃないけど、思った。









篤「…聞こえてた？今の晴ちゃんとの会話」


A『うん。晴、声大きんだもん 笑』


篤「3日以内にAを返さないと、捜索願を出すってさ」


A『うん 笑』






クスクスと笑うAが。あぁ、可愛い。愛おしい。可愛い。愛おしい。

同じ言葉を心の中で幾度も繰り返す。







篤「…で、どうする？」


A『うーん。晴に会いたい 笑』


篤「……俺、よりも？」


A『比べる次元が違う 笑』





前世の俺も、これくらいAに惚れまくってたのかな

なんて、またらしく無い事を思った自分に、また笑った。






・






篤「…3日後、長崎に帰る？」


A『そうしようかな』


篤「それまで鹿島でいい？あ、東京に行きたい？」


A『鹿島にいたい 笑』


篤「鹿島で何するの？」


A『もっと街を見たい。篤人の第2の故郷をもっと知りたい。あと、篤人の練習も見たい 笑』


篤「練習見学は、長袖ジーンズで来る事」


A『えー。暑いよ 笑』


篤「……日焼けするでしょ」


A『あまり気にしない 笑』


篤「………でも、ダメ」





俺の心を知ってか知らなくてかはわからないけど、『はい』と言ったAが、またクスクスと笑った。






篤「…なんで笑ってんの？」


A『笑ってない 笑』


篤「笑ってんじゃん」


A『笑ってない 笑』





クスクスと笑い続けるAの手を引っ張り、神社を歩く。






「岳とあまり仲良くならないように」という俺のちっぽけな心は、どうかAに伝わってませんように


見上げた月に、こっそりと祈った。

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