ラブセレナーデ16

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練習の休憩時間にみんなが話すのは、サッカーの事。俺は全く興味の無いファッションの事。

それと。…女の子の事。





「練習を見に来ているあそこの3人組が可愛い」とか、「あっちにいる子、タレントじゃない？なんか見た事あるんだよな〜」とか、「あ。コーチの彼女が見に来てる。コーチには勿体ない位の美人だよな 笑」「あそこにいる2人組っていつも来てるよな。俺、ショートの子がタイプ 笑」など

若い男が集まると、そんな事ばかり話している訳で。






どうかAの事を誰も見てませんように。という俺の願いは虚しく、「あっちにひとりで練習を見にきてる女の子がいた。初めて見たな、あの子。ほら、白いブラウスを着てる…」と話題に上がってしまい

慌てて「さっき長谷部さんも見に来てた気がする。あっちの方で」と、Aと逆の方を指差し咄嗟に嘘をついて、なんとか俺はその場を凌いだ。







その後も女の子の話ばかりするソイツらを見て、本当はみんなで夜飯を食いながらAを紹介しようと思っていたんだけど

勿体ないからやっぱり会わせるのを辞めよう。と思い直し、Aを紹介するのはお世話になったコーチと先輩数人だけにしようと決めた俺は、相変わらず独占欲の塊かもしれない。






・






練習を再開しても時間が少しでも空けばやっぱり俺はAを見てしまっていて、でもAはそんな俺に気づかず、色々な所を見ていて。




…ちゃんと旦那さんを見てなよ。というか、旦那さんだけ見てなよ



なんて、結婚してもやっぱり必死な自分に、少し笑った。








クールダウンでグラウンドの外周を走ると様々な所から飛んでくる黄色い声援。

そんな事を気にせず俺は、Aだけに神経を集中させる。






Aの前を通った時、ちょっとだけ目配せした。

そんな俺に今度は気づいたAが、フワリと笑う。







ちょっと、A


あまりそうやって可愛く笑わない事


そういう顔をしていいのは、俺だけの前で


誰がAの事を見てるかわかんないんだからね



……それに今は、たくさんの野郎共がAの前を通ってるんだから








「今の女の子、可愛かった 笑。ほら、白いブラウスのあの子」とAを振り返ったヤツの背中に、無言でパンチを入れた。




「なんすか、篤人さん」と驚いたソイツに

俺は「あ、悪い。当たった。………それにあの子、結婚してるみたいだよ。左手の薬指に指輪してたから」と、澄まし顔で答えた。

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