ラブセレナーデ6

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ガチャリと寝室が開き、寝癖をつけた篤人と目が合った。
何故か篤人は、少し笑っていて。


『おはよう、篤人』
「…はよ」
『篤人、少し顔赤いけど。具合悪い？』
「むしろ、絶好調」
『ならいいんだけど』


そのまま朝ご飯の支度をしようとするが、篤人がずっとこちらを見ている。
やはり篤人は、照れた様に笑っていた。


『どうしたの？』
「…別に」
『遅刻しちゃうよ？』
「ん」


不思議に思いながらもご飯の支度を再開すると、篤人が近寄ってきた。
再び目が合い、フっと笑う篤人。
一つキスを落とした篤人が「シャワー浴びて来る」と、浴室へ消えた。

唇に残る篤人の温もりに、また幸せが積もる。



微かに耳に届く、シャワーの音。
ご飯の支度も終え、ベッドを直しに寝室に入る。
ベッドの下から少しだけ覗く、昨日纏っていた下着がすぐ目に入った。


思い出したのは、強引に篤人に下着を脱がされた昨日の夜の出来事。
それと朝慌てて起きた為下着よりも先にパジャマを着て、シャワーを浴びに行った事。


…篤人が気づいていませんように。


自分の下着を急いで拾い、そう祈った。




朝ご飯も食べ終わり、篤人がジャージに着替え玄関に向かう。
靴を履いている姿をぼーっと見ていると、顔を上げた篤人と目が合った。

脳裏に浮かんだのは、ベッドの下に落ちていたあの下着。



『…篤人』
「ん？」
『あの、ね』
「ん？」
『……なんでも、無い』
「そ」

よいしょ、と立ち上がった篤人が、私に向き合う。



「…じゃ、行って来る」
『行ってらっしゃい、篤人』

一瞬唇が重なり、照れくさそうに篤人が玄関を出て行った。

幸せな朝。
今日も、きっといい一日になる。


篤人の唇の感触を思い出し、頬が緩んだ。




お風呂から上がり寝室のドアを開けると、篤人の笑い声が聞こえた。
微かに届く、何度か聞いた事のある女の子の声。
スカイプの相手は、きっと篤人の幼馴染みの子だろう。

まだ会った事は無いが、楓さん、莉子さん、蒼さん。
この3人の名前だけは篤人が教えてくれていた。


幼馴染みと過ごす大切な時間。
それは、私も同じ。


邪魔をしない様に寝室のドアをそっと閉めた瞬間、微かに届いた会話。

「そうだ！今日偶然、杏先輩に会ったの。杏先輩ね、」





”あっちゃん、杏先輩の事 凄く大事にしてたよね”

脳裏に蘇ったのは、あの日聞こえた言葉。




私を救うのは、やはり親友の言葉。


”大切なのは、今。ウッチーの恋人はAなんだから。胸を張りな”

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