ラブセレナーデ6

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「今日は、シャワーだけね」



それが、合図。

その言葉を聞くと恥ずかしくて、篤人から目を逸らしてしまう。



私の頭を優しく撫た篤人が「…お先」と、浴室へ消えた。


聞こえてくるシャワーの音に、顔が赤くなって。
部屋に残るのは篤人の微かな香りと、私の緊張。






「A」


お風呂から上がり髪の毛を拭いていると、ソファーに座る篤人がポンポンと自分の隣を叩く。
それに従い篤人の隣に座ると、バスタオルを奪われた。
ワシャワシャと私の髪の毛を拭く篤人は、まるでいたずらっ子の様な顔をしていて。
その反面、目には強い欲望が渦巻いている。



私の髪の毛を拭く篤人の手が止まり顔を上げると、目が合って。

ドキンと高鳴る心臓。
これからの時間に、心と体が期待する。


しばらく見つめ合った後、触れるだけのキスを送られた。



「もう、乾いた」
『…まだ乾いてない 笑』
「ダメ」
『まだ湿ってるもん。このまま寝たら、寝癖がついちゃう』
「どうせ、乱れるんだよ」


フっと笑った篤人が、ゆっくりと近づいてくる。
自然と閉じる瞼。


期待していたそれは、唇じゃなく額に送られて。
瞼を開ければ、篤人が意地悪そうに笑っていた。




「して欲しかった場所、違った？」
『…知らない』
「して欲しい場所に、Aからして」
『…嫌』
「ダメ」
『…ダメ』
「はい、どうぞ」

フっと笑い、目を瞑る篤人。
一つ深呼吸して、篤人に近づいた。





「…違うでしょ、そこ」

不満そうな声を出した篤人が、瞼を開ける。
それでも篤人は、たった今私がキスをした頬を照れくさそうに撫でていて。



『お返し 笑』
「へぇ。覚悟してね」
『…篤人の顔、怖い』
「焦らすAが悪い」
『…』
「時間は、たっぷりあるからね」

ニヤリと笑った篤人に手を引っ張られ、強引に寝室に連れて行かれた。



パチンと消された電気。
暗闇にぼんやり浮かぶベッド。




重なる唇。
体を這う、篤人の指と唇。
体のあちこちにチクンと感じる、心地いい痛み。
声が漏れれば、フっと篤人の笑う声が聞こえる。


『篤人、私も』
「ダメ」
『…いつも、そう言う』
「もっとAが馴れたらね」


いつか、馴れる日が来るのだろうか。

暗い部屋とはいえ、篤人の手が肌に触れる度恥ずかしくて。


それでも、とてもとても幸せで。






「痛く無い？」
『…うん』
「こっち見て」
『…嫌』
「ダメ」


重なった二つの体。
心と体が、篤人で満たされて。


篤人が、ゆっくりと私に溶けた。

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