ラブセレナーデ6

46 ページ46

「いい出来じゃない？」
『絢子さん、ありがとうございます』
「私は大して何もしてないじゃない 笑。ほとんど、Aちゃんが作った」
『一人じゃ、こんなに作れない 笑』
「いい日になればいいわね。内田さんは、覚えてるの？」
『きっと覚えてないと思います 笑。でも、それでいいんです』
「喜ぶわね、内田さん」
『はい 笑』
「あ、もうこんな時間。帰らないと」
『絢子さん、本当にありがとうございました』
「いつでも頼ってね。遠慮はナシよ」
『はい 笑』



絢子さんを玄関で見送り、リビングに戻る。

篤人がいつも座るソファーの場所に座り思い出すのは、あの日の事。








”ドイツに住んでるヤツが来るけど、ご飯追加出来る？”
”いいよ。その人どれくらい食べるの？”
”うーん、Aの5倍は食べる”



晴にドタキャンされたオランダ旅行の初日。
この日から、私の人生は大きく変わった。





”‥‥はじめまして。内田です”



”なんだ、麻也。彼女が来てるんだったら言ってくれればいいのに。邪魔しちゃ悪いし”
”ウッチー、この子彼女じゃないから 笑。幼なじみ。オムツの頃からの付き合い”



”しばらくよろしく。内田さん”

”こちらこそ”




”だってウッチーの事知らなかったじゃん。こんなイケメンなのに 笑”
”…ごめん、ウッチー。正直麻也以外よくわからなくて…。ウッチーも代表なんだね。ごめんね”
”逆にいいんじゃない？先入観無くて”







バタンと音がして外を見ると、車から降りて来た篤人と目が合った。
フっと笑い、歩き出す篤人。


今日の夜ご飯は豪華だから、きっと喜んでくれる。
篤人の喜ぶ表情を想像しながら、玄関に向かった。



ガチャリと玄関の鍵が開いたのは、少し時間が経ってから。


ドアが開くと目に入ったのは、大きな花束。
そして、篤人の恥ずかしそうな顔。




『綺麗…。どうしたの？この花』
「別に。ただ、花屋の前を通ったから。A、花好きでしょ」
『…好きだけど』
「ね」
『でも、驚いた。わざわざ買ってくれたの？』
「わざわざっていうか…。たまたま、目に入ったから。たまには、ね」
『……もしかして、今日が何の日か覚えててくれたの？』
「今日って、なんかあったっけ？覚えてない」



そう言う篤人の口元は少し緩んでいて。

そんな篤人に、私はまた笑顔になる。




出逢えて良かった。
好きになって良かった。
好きになってくれて良かった。



ちょうど一年前の今日。
私はあなたに、出逢った。

47→←番外編5　麻也SIDE

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す