ラブセレナーデ6

37 ページ37

「今のウッチーの顔、写真撮っておけば良かった 笑」
「…」
「Aの事が大好きなのは知ってたけど。どんどん想像を超えていく。凄いね、ウッチー 笑」
「…晴ちゃん。うるさいから」


楽しそうにケラケラ笑う晴ちゃん。
恥ずかしそうに笑うA。
お腹を抱えて笑っている顔長男。


二人に見えない様に、顔長男の脇腹に一発パンチをした。




あまりにも恥ずかしい失態をしてしまった為、少し遠くから3人の会話を見ていた。
…と言っても、Aの姿しか見ていなかったが。



今日入った温泉がどんなにいい温泉だった、とか
明日の試合はAの家で観戦する、とか
濱田屋のお茶漬けがやっぱり一番おいしい、とか


何気ない会話を、ただ聞いていた。



「そろそろご飯食べに行ってくる」
「いっぱい食べてこい」
『うん 笑』



そんな姿を見ていると、画面越しにAと目が合った。


『明日頑張ってね、篤人』
「…ま、程々に」
『ケガしない様にね』
「チームからも言われてるからね。試合の次の日の飛行機、時間覚えてるよね？」
『大丈夫 笑』
「ん」


俺らの会話を、ニヤニヤ聞いてる晴ちゃん。


「…晴ちゃん、ニヤニヤしてて怖いんだけど」
「ウッチー。さっきの仕返し？」
「別に。でも、本当の事」
「ねぇ、ウッチー」
「なに？」
「Aの胸大きくなったね。ウッチー、頑張ってるんだね」



晴ちゃんの一言に、俺とAの顔が真っ赤になった。








親善試合は、1-1のドローで終わった。
勝つ事は出来なかったが、たくさんの修正点が見つかった事は悪い事じゃない。
チームの雰囲気もいいし、俺達はもっと強くなれる。

みんな目指している方向は、同じだった。



シャワーも浴び、ミックスゾーンで取材に答え、チームバスに乗り込んだ。
当たり前の様に隣に座るのは、顔長男。

チャリンとメールが受信した。
見ると、Aから。




”お疲れさま、篤人”



たった8文字のメールが、また俺を幸せにしてくれる。






「あ。晴からだ」


顔長男の携帯が、メールを受信した。


晴ちゃん、そういえばAの家で試合見るって言ってたな。
…もしかして、Aの写真が送られて来てるのかも。



メールを見た顔長男が、プっと笑う。




「…晴ちゃん、なんて？」
「気になる？」
「…別に」
「じゃぁ、見せない 笑」



ニヤニヤする顔長男から携帯を奪うとそこに写っていたのは、俺のユニフォームを着て試合を応援する、Aの家族3人の後ろ姿だった。

38→←36

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す