ラブセレナーデ6

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少しの衝撃の後、飛行機が地上に降りた。
滑走を終えた機内はざわつき、乗客が飛行機を降りる準備を始める。



「A。先、行きな」
『うん』
「A」
『ん？』
「……寂しかったら、連絡くれてもいいけど」
『わかった 笑』
「…よろしく」
『うん 笑』
「…笑うな」
『笑ってないよ 笑』
「…」
『笑ってない 笑』
「……長崎まで気をつけて」

と言った篤人は、ブランケットの下で繋がっている手をなかなか離さない。
でもそれが、また私を幸せにしてくれる。

フっと笑った篤人がギュッと強く私の手を握り、ゆっくりと二人の手が離れた。



通路から振り返ると、マフラーを巻いている最中の篤人が 再びフっと笑った。






長崎の家で出迎えてくれたのは、あのマフラーを巻き日本代表のユニフォームを着たご機嫌なお父さん。



「お帰り、A」
『ただいま。お父さん、試合はまだ先だよ 笑』
「知ってる。でもAを出迎えるには、この姿が一番かなと思ってな」


嬉しそうなお父さんに、心が温かくなる。




『お父さん。篤人から、たくさんお土産を預かったの』
「篤人君、そんな気を使わなくていいのにな」
『きっとお父さんの事が大好きなんだよ』


私の言葉に、顔を真っ赤にするお父さん。


お父さんも、篤人の事が大好きだもんね。





『はい、これ』


篤人から預かって来たのは、サイン入りの日本代表のユニフォーム。
そして同じくサイン入りの、シャルケのホームとアウェーユニフォーム。


それを見て喜んだお父さんが「母さん。額を買って来てくれ。家宝にするぞ」と言い出し、お母さんとお腹を抱え笑った。





「A。これ見なさい」


慌ただしく、録画したものを再生するお父さん。
途中から始まったそのニュースは、お父さんが慌てて録画したものだという事が伝わる。


そこに映っていたのは、空港で報道人に囲まれている篤人の姿。

テレビに映る篤人のマフラーと自分の巻いているマフラーを交互に指差し、お父さんがまた満足そうな顔をする。





ー内田選手。親善試合の意気込みは
「そうですね。いつも通りにやればいいかなと」


ー長時間の移動で、疲れはないですか？
「大丈夫です。飛行機ではずっと寝てたので」





インタビューに飄々と答える篤人に、報道陣が「内田さん。そのマフラー、とても似合いますね」と声を掛けた。




フっと笑いマフラーを口元までたくし上げた篤人が「…僕もそう思います」と答え、恥ずかしそうに目を伏せた。

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