ラブセレナーデ6

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真面目男が連れて来たのは、高級天ぷら料理店。


なんでこんないい店知ってるの？
この前のすき焼き屋さんだって、随分高級店だったよね。
…一緒に来る相手もいないのに。


店の前で『凄い』と佇むAに「何でも好きな物食べてね」と、真面目男が声を掛ける。





「…A。そこが一番暖かいんじゃない？」
『そうかな』
「A、寒がりだからそこに座りな」
『ありがとう、篤人』


Aの背中を押し座らせたのは、一番壁際の席。
その隣に、すぐ座る。
顔長男に無言の合図を送ると、苦笑いしながら俺の隣に座った。




真面目男が座ろうとした時に、Aがゴソゴソと紙袋からクッションを取り出した。


Aが真面目男の事を考えながら作ったクッション。
Aが真面目男のお尻を心配し、一生懸命作ったクッション。



この高級な店に全く似つかわしくないクッションを、Aが一生懸命真面目男に勧める。
真面目男は驚くも結局Aの熱意に負け、それをお尻に敷いた。


不自然に一人だけ座高が高い真面目男。
ほっとした顔をするA。
不思議な顔でAを見る顔長男。


俺は笑いを堪えるのが必死だった。





「適当に、4人分揚げて下さい」
「はいよ」


座高の高い真面目男が、男前に注文をした。
こういう店に馴れている姿がまた大人で、少し悔しい。


ベテランの料理人が、目の前で天ぷらを揚げる。
その姿に『こんな風に天ぷら食べるの初めて。晴に自慢しちゃお 笑』と、俺の可愛い恋人が目を輝かせた。




『美味しい！』
「Aちゃん。どんどん食べてね」
『ありがとうございます 笑』


嬉しそうなA。



A。
嬉しいのは凄く伝わるんだけど、それにしても喜びすぎじゃない？
気づいてないかもしれないけどさ。
Aの笑顔って、結構ヤバいからね。
ユリアンだって、いつもAの事可愛いって言ってるし。
俺以外の男が少しでもドキリとしたら困るんだけど。



『美味しいね、篤人。幸せ 笑』

俺を見て笑うAのその笑顔に、またドキリとした。




『舞茸だ 笑』

Aの声を聞き、座高男が反応した。


「Aちゃん、舞茸好きなの？」
『大好物です』
「今揚げてもらったばかりだから、俺のも食べていいよ」
『やった 笑』



…ダメ。




「あ、間違えた。A、こっち食いな」

座高男が皿ごと差し出した舞茸を俺が食べ、俺の舞茸を俺の可愛いAにあげる。



それを見て笑った顔長男の足を、思いっきり踏んだ。

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