ラブセレナーデ6

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家に帰ると、見慣れた車が停まっていた。


『お帰り、篤人』

俺を出迎えるのは、恋人の笑顔。
心無しか、いつもよりも嬉しそうに見える。


玄関で耳を澄ませ絢子さんがキッチンにいる気配を確認し、Aの頬にそっとキスをした。



「内田さん。Aちゃんに、バイトをお願いしてもいいかしら？」
『バイト？』
「Aも聞いてないの？」
『今、初めて聞いた』
「内田さんの許可がないと、頼めないから。心配性だもんね、内田さん 笑」


俺を見て、ふふっと笑う絢子さん。
絢子さんには色々な失態を見せているから、何も言い返せない。


「別に、俺の許可が無くてもいいけど」
「じゃぁAちゃん、よろしく」
「待って。内容は？」


内容は、ちゃんと教えてもらわないとね。

ほら。Aには、俺の世話もしてもらわなきゃいけないし。
それに、Aがバイトをしなくても全然暮らせるくらい俺が稼いでるつもりだし。
だから、あくまでも気分転換ね。



「内田さん。Aちゃんに、またモデルをして欲しいの」
「何の？」
「…言いにくいんだけど、下着の」
「は？」



絶対絶対絶っっ対、ダメ。
なんでAが俺以外の前で下着にならなきゃいけないの？
Aのそんな姿、他の男に見せてたまるか。



相当凄い顔をしていたのか、絢子さんが俺を見て「冗談よ」と、楽しそうに笑う。



…絢子さん。冗談でもやめてね。
嫌すぎて、息が出来なかったんだけど。



「内田さんの心配するようなモデルじゃないわよ」と笑う絢子さんは、それ以上教えてくれなかった。
Aに聞いても、『当日まで内緒なんだって』としか答えない。
俺の心配とは逆に『お金をもらうんだから、しっかり頑張らないとね』と、Aは笑っていた。





数日後練習を終えて携帯を見ると、絢子さんからメールが入っていた。


”心配性の内田さんへ”


添付された写真を急いでタップする。
そこに映っていたのは、着物姿のA。


黒い着物を着たA。
橙色の着物を着たA。

短い髪の毛にも花が飾られ、それがまたとても似合っている。




…ヤバい。誰にも見せたくない。


いつもとは違う雰囲気のAがまた可愛く、写真を見ながらニヤニヤしていた。



赤い着物のAの写真に差し掛かった時、手が止まった。
Aの隣で袴姿で立っているのは、背の高い男前の外人。



…A、そんな可愛い顔で笑わなくていいから



俺の小さな嫉妬は、きっと絢子さんには届いているだろう

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