ラブセレナーデ7

7 ページ7

「あ。ウッチーだ」

テレビに映った篤人に、咲ちゃんが反応する。
「結婚式のドレスがきつくなると困る」と笑う咲ちゃんも、すでにビールを3杯飲み干していた。




「このタレント、ウッチーの事狙ってる気がする」
『えー？笑』
「見て、この上目遣い。それにこの距離、近すぎない？」
『そう言われれば 笑』
「この子、この前麻也にも取材してたけど。明らかに、距離感が違う」
『あはは』
「ちょっと見た？今、さりげなくウッチーにボディータッチしたよ。A、こういうの許せるの？」




咲ちゃんの質問に答えたのは、晴だった。


「全然大丈夫。ウッチーは、Aの事しか見てないからね」
「そりゃそうだろうけど…」
「咲が思っている何百倍も、ウッチーはAに惚れてる。Aの愛情よりも、遥かに愛が深い 笑」
「このタレント、今大人気なんだよ。可愛くてスタイルが良くて、そして、頭もいい。野球選手やサッカー選手から、レポーターで一番人気なんだって」
『へぇ』
「今まで何回もこの子のインタビューを見た事あるけど。こんなに選手に近づいてた事なんて無かった。絶対にウッチーを狙ってるよ、この子」
「大丈夫だって、咲 笑」
「でも…」



咲ちゃんの不安を一気に拭ったのは、”内田さん”と表示され鳴る私の携帯。
「ね。私の言う通りでしょ？」と笑った晴が、ビールをグイっと飲んだ。






「…何してる？」

電話の向こうから聞こえる篤人の声に、思わず頬が緩む。





『今ね、晴と咲ちゃんと濱田屋でご飯食べてる』
「飲んでるの？」
『もちろん 笑』
「3人だけ？」
『そう。3人』
「…そ」
『うん 笑』


少し沈黙が続いた時、突然晴が私の携帯を奪った。





「もしもーし。ウッチー、今テレビに出てたね。しかも、可愛いタレントにインタビューされてたね」

「でもウッチーは、全く興味無さそうだったけど。ウッチーは、いつもAしか見えてないからね 笑」



ケラケラと笑う晴。
篤人の声は聞こえないが、きっと晴の勢いに苦笑いしているのだろう。






「あ。咲もウッチーと話したいって」

突然の晴の言葉に驚く咲ちゃんに、晴が私の携帯を渡す。





「ちょっと、晴。心の準備が…」
「早くしないと、Aに代わるよ」
「わかった。挨拶だけする」


深呼吸をして、電話に出る咲ちゃん。





「もしもし、内田さんでしょうか。いつもAがお世話になっています」

背筋をピンと伸ばして電話に出た咲ちゃんに、晴とお腹を抱えて笑った。

8→←6

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す