ラブセレナーデ7

辿りつきたいあの場所 ページ34

どれだけ時間が経っただろう。

言葉もほとんど交わさず、ただお互いの体温を感じ合って。




月が、俺達を照らす。



満たされた時間。
心から溢れる愛しさ。
俺がただ一人、愛する人。




『…篤人』
「ん？」
『……のぼせちゃう』
「ダメ。もう少し」
『もう、限界かも』
「ダメ」
『お願い』
「じゃ、一緒に風呂から上がる？」
『…嫌』
「そう言うと思った」



後ろから見ても、Aの肌は桃色に染まっていて。
それがまた色っぽいのだが、さすがにずっとこのままでいる訳にもいかない。





「いいよ。5分後に、俺も上がるから」
『……目、瞑っててね』
「ヤダ」
『ダメ』


汗ばむ、Aの白いうなじ。
そこにキスをして、「わかった」と目を瞑った。





パシャリと鳴る水音。
揺れる水面。
Aの足音。



目を開けたい衝動に懸命に耐え、脱衣所とのドアが閉まる音を待った。






ますます静かになった一人ぼっちの風呂で、頭の中で300秒を数える。


298.299.300



水が、ザブリと大きな音を立てた。







急いで脱衣所に行き、体を拭く。
先程脱ぎ捨てた俺の浴衣は綺麗に畳まれていて。

これから始まる時間を考え、頬がまた緩む。


鏡に映った自分のニヤケ面に驚き、両手で強く自分の頬を数回叩いた。







部屋に戻れば、Aがゆっくりと振り向いて。

その姿に、もう我慢する事が出来なかった。





パチンと電気を消し、ゆっくりとAに近づく。

月明かりだけが差し込む、暗い部屋。







これから始まるのは、二人の愛しく大切な時間。


心が、Aを強く求めた。







＊＊＊＊＊＊＊＊
作者より

『ラブセレナーデ7』を読んで下さり、ありがとうございます。
二人の時間を、番外編『果実』にて更新致しました。
『果実』目次「作者より1/13」から、ご覧下さい。
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R指定を含む内容になりますので、18才未満の方、小説のイメージが崩れると思われる方はご遠慮下さい

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