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黙々と食事をしていると蘭が鍋に入れてあったほうれん草を私の方へと寄せてくる。
蘭ってほうれん草苦手だっけ……と考えながら寄せられたほうれん草を箸で掴んで皿に入れる。
「生理中って鉄分取れるモン食っといた方がいいんだろ?」
「私、生理きたって言ってないよね?」
「毎月このくらいの週に薬飲んでるだろ。」
意外だった。蘭は、私の事を身の回りの事をやってくれる都合の良いお飾りの嫁程度の認識しかないのだと思ってた。
仮にも1度は好きという気持ちが繋がって愛を感じ、結婚した相手。
昔とは関係性がガラッと変わった訳ではないが、歪な夫婦関係である事には間違いない。そんな相手でも1ミリくらいは興味関心があったらしい。
「あー……確かにそうだね。」
私の言葉を最後に沈黙が流れる。私から何を話せばいいのか、言葉を紡げば良いのか分からない。
蘭の態度が変わってから数年。
一緒に食事をして、楽しい会話とか2人で出掛ける予定を立てるとか結婚前後はよくしていたけど、仕事の愚痴ばかりで私の話をする事も無くなった。
結局、互いに話をしないまま食事は終える。
汁だけ残った土鍋や皿をキッチンへ運び、そのまま皿洗いに取り掛かろうとスポンジを掴んだ。皿を手に取ると、すぐ横には蘭が居る。特に声を掛けてくる様子も無く、大人しく見ているだけ。
「……な、何?」
「別に。」
そうは言うものの、ずっと隣で見ていられると落ち着かない。蘭の存在を無視して洗い物を続行するが今日の蘭は掴みどころがなくて困る。
文句をたらたらと横で言ってくれていた方がまだ思惑やら何やらが伝わるのに。
落ち着かないまま、洗い終えて家事をしようと移動すれば行く所に蘭がついてくる。話しかけてくれればよいものを何も言ってこなくて本当に気味が悪い。
生理中も相まって、些細な事で余計にイライラしてしまう。
「ねえ、さっきから何なの?言いたい事あるならいつもみたいに言えばいいでしょ?」
勢い任せにバーッと言葉を吐いてすぐにハッとした。これでは喧嘩になりかねない。「折角俺が優しくしてやったのに」と売り言葉に買い言葉だ。
今は出来るだけ不毛は争いは避けたい。
「家事、いつ終わる?」
「……もう終わるけど。」
「分かった。……終わったらソファのトコ来いよ。絶対だからな。」
怒るような事もなく、言いたい事を私に伝えたらリビングに行ってしまった。本当に、何がしたいのだろうか。
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メイ(プロフ) - 最後まで読みました!!めっちゃ面白かったです!!ありがとうございました!! (4月14日 19時) (レス) @page50 id: 036127fc08 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - はるかさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️そう言っていただけてとても嬉しいです…!ありがとうございます。完結まであともう少しお付き合い下さい♡ (3月26日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - 作者から作品を探すぐらいさきなさんの書くお話が好きです。更新楽しみにしています。 (3月24日 1時) (レス) @page37 id: 2fa442bcb8 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - リハさん» 初めまして、コメントありがとうございます✨️とても嬉しいです♡更新ちまちま進めていきますね🫶🏻 (3月16日 0時) (レス) id: 4a9b8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
リハ - とても面白くて大好きです!更新ファイト❣️ (3月15日 22時) (レス) @page28 id: fb4d5611fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2024年2月23日 0時