少女達に纏わり付くもの ページ44
一旦、事が落ち着き、旧晩香堂からの外出を認められた探偵社一行。
敦は探偵社の事務所へ向かった。
「おや、
そこには尾崎が待機していた。
驚いた敦は、何故此処に居るのか、と警戒して訊く。
「私は太宰と取引をしたのじゃ
行方不明の鏡花を救うなら、それを大人しく此処で待つ、とのう
童は良いのか？太宰の傍に居らんでも」
「…太宰さんは政府の
暗い顔で敦は云った。
「成程のう…
異能特務課と云えば、国内最高峰の“秘密異能力組織”じゃ
味方とすれば探偵社最大の切札となるじゃろうなあ」
「そうすれば遠からず鏡花ちゃんは探偵社に戻ってこられる」
「…如何かのう」
尾崎が切ない顔で云った。
「のう童、幾月かばかり稽古を受けただけの14の娘が、35人も殺し果せると、本気で思うのか？
……才能じゃよ
才能が鏡花の魂に黒く絡み付いている以上、あの子は闇から抜け出せぬ
嘗ての私と同じようにのう」
敦の瞳が揺らぐ。
「…あの時、Aは云っておったじゃろう？」
ーー汚い光?それは自分自身の事では?
Aは尾崎にそう言っていた。
「…Aはのう、人生の約半分をポートマフィアとして生きておる」
敦が尾崎を見据えた。
「じゃがのう童、そなたも気付いておるじゃろう？
…あの子は…Aはポートマフィアには向いておらぬ」
敦が息を呑んだ。
「あの子も鏡花と同じ様に、黒い闇に取り憑かれておる」
敦は旧晩香堂での会話を思い出した。
Aはポートマフィア
太宰曰く、Aをその闇の中から解放するべきなのだ、と。
「あの子は森殿の
それ故、森殿の想いを何時までも背負っておる
……Aは、死ぬ瞬間が嫌いなのじゃ」
「死ぬ…瞬間…？」
「人が死ぬ瞬間じゃ、それを目にすると血圧が急激に下がり、極度の過呼吸に襲われる」
「え…？」
「故に、Aは人を殺せない」
「…それは如何してなのですか」
「詳しくは話せんが、過去に
尾崎が切ない瞳で敦を見た。
それにつられて真剣な敦の瞳に尾崎の姿が映る。
「童、鏡花とAを頼む」
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作者名：myu | 作成日時：2021年7月28日 23時
