【文スト】其の女、何故生きる③ (ページ41)

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まだ決意を固めるには早すぎるページ41

中也とAが不敵に笑った。

乱歩は何かに気付いたようで目を見開いた。

「…成る程ね、そう云う事か」

すると今度は乱歩の声が聞こえてきた。

《組合は僕達と同じ様に罠を疑った筈だ
然し彼らは食いついた

…余りにも餌が魅力的だったからだ
何で組合を釣った…？》

『ふふ、ご名答だね、名探偵さん？でもね、私から隠れても凡て無駄なんです
……今回は少し見付けるのに手間取りましたが、県外に避難しているんですね？

……餌は………武装探偵社の事務員達だ』

《事務員を餌にしただと！？》

「直ぐ避難させりゃあ間に合う
その上、組合はお宅等が動く事を知らねェ
…楽勝だァ」

「奴等の言葉に嘘はあるか？」

福沢が乱歩に訊く。

「無いね、残念乍ら…
こう云う時は真実がいちばん効く」

その乱歩の声が聞こえた中也は笑った。

「“穴と判っていても探偵社は落ちずには居られねぇ”
首領の言葉だ」

そこでAは妨害電波を写真機に放ち映像を停止させた。

『これで任務完了
中也、帰ろう？』

「あァ」

二人が踵を返したその時、

「A」

与謝野の声がAの足を止めた。

『…何です？』

Aが振り返らずに答える。

「……アンタ、本当にそれで良いのかい？
今のままで絶対に後悔しないと言いきれるのかい？」

『何言ってるんですか、与謝野先生』

「A、帰るぞ」

『うん』

中也が面倒臭そうにAの肩に手を置いた。

「逃げてるだけじゃないのかい？」

Aは足を運び始めて止まらない。

『………その答えは、与謝野先生も、知っている(・・・・・)筈です』

与謝野に聞こえたのか聞こえなかったのか、判らない声で呟いたA。

その後、与謝野の声は聞こえなかったので、恐らくAの声は届いていたようだ。