【文スト】其の女、何故生きる③ (ページ16)

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その男が動き出したページ16

雨がふっていた_______

「何時もその本を読んでいるな、坊主
そんなに面白いか？」

「面白い、もう何度も読んでる」

「そんな話より面白い話は世の中にはごまんとあるぞ
その本、下巻は如何した？」

「下巻は持ってない、幾ら探しても無かった」

「それで得心が行った…
その小説は下巻がとんでもなく最悪でな、上巻と中巻だけで満足しておけ、それが御前の為だ」

「…そうもいかない」

「ならば御前が書け」

「自分が書く？」

「それが、唯一この小説を完璧なままにしておく方法だ
小説を書く事は人間を書く事だ
如何生きて如何死ぬべきかという事をな？

儂の見たところ、御前にはその資格がある」

「貴方は誰なんです？」

「儂か？儂の名は……………」

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「御前に言われた場所で安吾に会った
…黒ずくめの兵士達と闇に消えた」

目覚めた織田は寝台の上で太宰と会話をしていた。

「差し当たり、黒の特殊部隊といった所だね
如何やら起こっている現象は2つに分けられるようだ」

黒の特殊部隊とミミックは別組織で、今はマフィアの芥川率いる武闘派構成員をミミックに対抗させているらしいが、何より相手の異能力すら判っていないのだ。

「その芥川という男、確かお前の部下だったな？
かなり攻撃的な異能力を持っていると聞いたが？」

「彼は鞘の無い刀剣だよ、遠からずマフィア最強の異能力者になるだろうが、今は誰かが刃の仕舞い方を教えなくちゃならない」

太宰は芥川に少なからず期待しているのだ。

それを感じ取った織田は少し驚いた。

「今朝五大幹部会が招集され、ポートマフィアの全戦力をもってミミックを迎撃する事が決定された
つい先刻、芥川くんを含む私の部下が奇襲を受け、今も美術館で抗争を…」

太宰の話を聞きながら、寝台から身体を起こし銃を装着する織田。

「織田作？真逆行くのかい？」

太宰は驚いて織田を見る。

「全戦力をもって迎撃するんだろ？」

「人殺しをしない織田作は抗争なんて興味無いと思っていたよ」

「無い」

「じゃあ、何で？」

織田が立ち上がりドアの前に足を運ぶ。

「借りの多い人生だからなぁ
部下が苦戦中なら、助けが必要だ」

そう言った織田はドアを開け部屋を出ていった。

「借りなんて忘れてしまえばいい
相手だって何を貸したかなんて覚えちゃいないさ」

太宰は1人残された部屋でそう呟いた。