私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ4)

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恋するフリ始めました【4】ページ4

撮影は昼前には終わった。

今日はこのあとは少し時間を置いて雑誌のインタビューが1本ある程度で比較的ゆとりがある。
今からご飯を食べて、インタビュー終わったら明日は映画の撮影だから早めに休もうかな…
スタッフさんや共演者の方に軽く挨拶をしながらスタジオを出ようと歩き出した。

「あ、Aさん！」

猫が何か未確認物体に遭遇するかのように毛が逆立って思わず飛び上がりそうになった。
元気で明るい少し高い声にまさか名前を呼ばれるなんて思っていなかったからだ。

自分でも状況が理解できず固まったまま恐る恐る声の方を向くと、紛れもなくそこにいたのは向井さんで。向井さんが、紛れもなく私の方に向かって歩いて来ている。なんなら少し小走りで。え、かわいい…。

いや、そうじゃなくて。

撮影の時以外に栗色のキラキラしている目が私に向けられているなんて考えられなくて、その眩しさで眩暈までしてきた。寝不足のせい？

「…Aさん？」
『あっ、ごめんなさい、びっくりしちゃって。ど、どうしました？」
「あ、あんな～ちょっとふっかさんがAさんに用事があるんやって」
『？？ふっかさん？』
「あ！もしやふっかさん知らん？！ちょっとふっかさーん！さっきわからんはずがないって言うてたけれど全然やん！」

ケラケラ笑いながら向井さんが手招きした人を見てびっくりする。
少しだけ前に重心があってどこかちょっと気怠そうにゆっくり歩いて来たその人は

一昨日私がぶつかった人…

「初めまして……AAさん？」

ふっかさんと呼ばれるその人は、優しい中にどこか何かを含んでいる声で私の名前を呼んだ。