其ノ九 ページ11
あの日、髪を引っ張られた際に解けた髪紐が土井先生の手の中にあった。
これは五年生のみんなが誕生日にと一京に買ってくれたものだった。
もう無くして、二度とかえってこないものだとばかり思っていたのに。あの時使ってた姿そのままで、自分の手の中に帰ってきたのだ。
『土井先生これ…！』
土「……牢の中で見つけたんだ。錦が血文字で『生きている』と書き記した辺りに。ほら、洗って磨いたから綺麗なもんだろう？……お前は絶対に帰ってくると思っていたから。すぐに使えるようにしてたんだ。」
土井先生はそう言うと、一京を引き寄せてその白くて長い髪に櫛を落とした。
軽くとかして纏めて結い上げれば、あの頃の錦一京がそこには立っていた。
土「よし！やっぱりお前はこれが一番似合うよ。」
『土井先生ありがとうございます…！』
ふわりと笑った一京の動きにつられるように髪紐が揺れて、蜻蛉玉がぶつかりカチリと音がした。
あの頃、その濡れ羽色に似合うと言う理由で皆で探して渡したあの赤い色をした髪紐と蜻蛉玉は今の白く透けるような髪にも映えてとても似合っていた。
伊「さぁ、行こうか。とりあえず委員会に顔出てもらってもいいかな？数馬も左近も、一京が行方不明になってから自分も探しに行くと言って聞かないし、毎日目を腫らして大変だったんだ。」
勘「そういやAって保健委員だっけ？」
三「あんまり不運じゃないから忘れがちだけどな」
『まぁ、僕は割と普通な方だとは思ってる。』
八「生物委員に来てほしかったんだけどな〜」
兵「いや、そこは火薬委員だろ。」
伊「ちょっと竹谷と久々知？！だめだめ！！一京はうちの子です！！」
そう言って伊作が一京を抱き寄せた時、誰かがくすりと笑った。
『らいぞ？』
雷「ふふ、ごめんね。なんだか楽しくて。あの時の時間が戻ってきて、嬉しくて。」
だから笑っちゃった。
と、雷蔵がふわりと微笑んだ。
それを見た一京が「らいぞかわいい！」と抱きしめ、三郎が「てめ！コラA！！私の雷蔵だぞ！！」と突撃し、さらにそれを見た勘右衛門と八左ヱ門が「俺も混ぜろー！」と飛びついた。ずっとソワソワしてた兵助は後ろにいた留三郎に背中を押され「みんなばっかりずるいのだ！」と団子状態の五人に突撃しした。
なんとも微笑ましいその状況は、まさにかつての仲良し六人組の姿だった。
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黒糖さんでーす - 良かったです (2023年3月1日 10時) (
レス) @page13 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
スイちゃんですよ〜☆ - 一色識さんのこと、呼び捨てにしてしもうた。、、、すいやせん、 (2023年1月6日 1時) (レス) id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
スイちゃんですよ〜☆ - 一色識の作品は良いものばかりです。他の作品があったらぜひ、読ませて頂こうと思いやす(;´д｀) (2023年1月6日 1時) (レス) id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
スイちゃんですよ〜☆ - 良い物語だったです。終わりまでみやした、うん｡面白し、感動もあり良かったです!!!!コメント失礼しました (2023年1月6日 1時) (レス) @page13 id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
Topaz トパーズ - 素敵です！いつかは分からないけど、最新待ってます！頑張ってください！ (2021年7月21日 6時) (レス) id: 09b28cb614 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一色識 | 作成日時：2021年4月18日 21時
