私の先生、辞めてください【逆先夏目】 (ページ5)

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辞めました。ページ5

*

「逆先夏目先生」

愛しいあなたの名前を呼び、近くまで駆け寄る。寒そうにコートのポケットに手を突っ込んで、私の方を見た。

「合格、しました!! 」

「よかった、おめでとう。よく頑張ったね」

私の頭に彼の手が乗る。嬉しくて仕方がなかった。そっと顔を上げて、彼を見れば優しげに微笑んでいて、ぽっと頬が火照り始める。
もうすぐ春だというのに、外はまだ寒い。逆先先生の手はひんやりと冷たくて、体温が高い私の手で彼の手を包んだ。

「君の手はあったかいネ」

「先生の手が冷たすぎるんですよ」

ずっとここで待っていてくれた、と思うとなんだか嬉しくなってしまった。
頬を先生の冷たい手で包まれる。そのまま親指の指先で優しく撫でる。

「 Aちゃん」

「今日でボクは君の先生を辞める」

「ボクの彼女になってくれませんか...? 」

冷たい風が頬にかする。だけど全く寒さなんて感じなくて、代わりに熱が集まっていく。
私の胸の鼓動がダイレクトに耳に響いて、ちょっとだけ恥ずかしい。

「喜んで。夏目さん」

先生と生徒の関係はもうおしまい。
だけどその時の素晴らしい思い出を私は忘れたり、消したりはしない。

これからは恋人同士として、素敵な思い出を残していくんだ。

＿＿誓うようにふたり、口付けを交わした。

fin.