３０音 ページ32
．
「Aがそんなことするわけねぇだろ！！！」
突然虎杖の怒号が響く。
「分かってた……分かってたんだ……
Aが、意味もなくこんなことするはずねぇって……記憶喪失だからって！
訳があるんだろうなとは薄々思ってたけど…まさか、…し…っぬかもしれないなんて……聞いてねぇよ……ッ」
両頬を涙が伝う。
「……の、野薔薇さん！野薔薇さんは私の味方だよね！！？」
神谷は釘崎に縋る。
「ごめん……ムリ…私、Aに謝んないとね」
嗚咽混じりの声でそう告げ、釘崎は目尻の涙を拭う。
「ふっ……伏黒さん！！」
「分かってんだろ、俺が、俺達が、お前の味方をするわけねぇって」
「やめろ神谷。ここにいる奴らの中に、お前の味方は一人もいない」
家入さんの一言に、神谷は床に座り込む。
「な……なん…ッで…なんでなんでなんで！！なんでなん！？何で皆私を見捨てるん？何で、何で私が責められなあかん！！
何で、何で、何でぇ！！！」
急に関西弁で叫び出す。
「明里」
静かに声が響いた。
見れば、サングラスをかけた先生がそこにいた。
「ごじょ……せんせ」
「学長が呼んでる」
「は…ぃ」
神谷はふらふらと医務室をあとにする。
先生はこちらへ来る。
そして
「ごめん………ごめん、A…っ」
ベッドの側に蹲った。
「信じてやれなかった……記憶喪失にしてはおかしいのも分かってた…！
ごめん……ごめんな…！！」
肩が震えている。
こんな先生は初めて見た。
なぁ、霞。
早く戻ってきてくれ。
皆待ってる。
お前は嫌われたかったのかもしれない。
でも俺達は
本当のお前を知っている俺達は
心の底からお前を嫌うなんて
．
出来るわけないんだ。
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作者名：しぐれ | 作成日時：2022年1月24日 21時
