-Episode87- ページ39
九十九「君は？」
公道に繋がる抜け道を歩いていると突然の質問を投げかけられた。
「まずは高専から」
ずっと握っている傑の手につい力が入ってしまう。
九十九「高専？」
「あァ、私達が駄目になってしまったらその計画は成せん。事はそこからだろう」
そう言うと九十九由基は笑った。
九十九「それは長年の知恵か？」
「ただの戯言だと思っておけばいい」
九十九「君と話をしていると天元と話をしているみたいだ。もしかして姉妹とかか？」
「私はアイツよりまだ人の心があるほうだ。一緒にするな」
九十九「冗談、冗談」
公道に出ると一台のバイクが止まっていた。
九十九由基はバイクに跨りエンジンをかける。
九十九「じゃあね。本当は五条くんにも挨拶したかったけど間が悪かったようだ。これからは特級同士、仲良くしよう」
夏油「悟には私から言っておきます」
九十九「あ、そうだ。最後に星漿体のことは気にしなくていい。あの時、もう1人別の星漿体がいたか既に星漿体が産まれたのかどちらにせよ天元は安定してるよ」
夏油「でしょうね」
隣からそう返事をした傑の声は重たい。
九十九由基の姿が見えなくなってから私は傑の手を引いた。
夏油「え？何処に」
「内緒」
揺らめている影の中に入った。
無音、ただただ真っ暗な空間を歩く。
闇を抜けた先は、海。
夏油「此処は」
辺りを見渡している傑が可愛らしくて笑ってしまう。
「悲しく、辛く、胸が痛いときに来る場所」
緩やかな波の音に目を瞑ると爽やかな風が頬を撫でる。
浜辺に一つのベンチ。
そこに傑を座らせる。
「綺麗なものだと見ない方がいい」
夏油「え」
「今でもきっと呪いが見える人間を気色悪いだのと言う非術師もいる。自分達が守られていることも知らずに…つくづく殺したくなる」
片手を空に掲げながら言う。
夏油「どうしてとどまっていられる。憎いときだってあるだろう」
「ある。だけど此処にずっとあるものが私を私でいさせてくれる」
傑の胸に手を当てる。
「傑、揺るぐな」
手を拳にして胸を叩いた。
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作者名：アルマジロ
| 作成日時：2023年9月2日 9時
