-Episode81- ページ33
あの日から一人での任務が増えたせいか皆が顔を合わせる機会が格段に減った。
私は、以前と同様に海外へ派遣、アイヌ呪術連合へ定期報告会の出席、天元と獄門彊裏の生成でほとんどを高専で過ごすことは無く気づけば学年が一つ数を重ねた。
春、1日だけ桜を見に高専に来た時に傑と会えた。
その時、今年の夏は忙しくなると教えて貰った。
どうやら昨年、大きな災害が日本で起きたらしい。
そのせいだと。
そこから私は、中国に羂索がいると聞き飛び立ったが不発。
既にもぬけの殻状態で次の情報を待つべく日本に仕方がたなく帰国した。
大きなキャリーケース、2つを引きずりながら迎えの補助監督のいるロータリーへと向かっていると見慣れた姿がゲート外に見える。
「悟?」
声を掛けると見ていた携帯から顔を上げた。
五条「よ」
「よって任務は?」
五条「終わった。んで担当してた補助監督がAを迎えに行くって言うからついて来た」
「そっか」
前に悟に会ったのはいつだっただろうか。
記憶を巻き戻っているがすぐには出て来ない。
私の時間はあの日から止まっているのかもしれない。
五条「髪、伸びたな」
胸の辺りまで伸びた髪を触る悟。
至近距離で見る悟の肌は相変わらず白い。
久しぶりに会ったからか私の手は悟の頬を撫でていた。
生きている証拠の温かさが手の平に伝わる。
五条「A」
「ん、あ、ごめん」
すぐに手を離すと何故かその手を掴まれた。
五条「今日の昼、皆で素麺食べるから早く帰るぞ」
「うん」
悟の手はこんなに大きかっただろうか。
少し力をいれると一歩前を歩いていた悟が私の顔を見る。
特殊なサングラスのせいで口元しか分からないがどこか嬉しそうなのは分かった。
五条「お土産は」
「あるよ」
五条「甘いもん?」
「甘いのも」
五条「ん」
空港から高専に向かう車内でもずっと手は繋がれたままだった。
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作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年9月2日 9時