-Episode72- ページ24
泣きじゃくるAの横顔を見ていると突然の桜吹雪に巻き込まれる。
桜吹雪が止むと今度は旧寮のベランダに俺は立っていた。
「ココアでいい？」
後ろから聞こえた声に振り向くとAがコップを二つ持ってベランダに出て来ていた。
「悟？聞いてる？」
知らない。
俺はこうやってAと此処でこんな風に並んでこの景色を見たことがない。
「ちょっと？おーい、悟？」
これを受け取ったらどうなる。
差し出されているコップを受け取ると手を伸ばすがその手はAの首を絞めた。
苦しさにもがくAの手から二つのコップが落ちる。
コップが割れる音。
中に入っていたココアが足元に広がる。
五条「誰だ、てめェ」
「さと……る」
五条「あいつは死んだ！」
コップを離した手が俺の手を急に物凄い力で掴んだ。
「悟」
しっかりとした声で俺の名前を呼ぶ。
「死にたくない、悟の隣で生きていたと死に際願った。だから私は呪いに近い存在となってしまったのだろう」
五条「…んだよそれ。意味分かって言ってんのか」
そう言うとAは首を傾げた。
「愛、だろうな」
五条「は」
「一つ、覚えておくといい。愛ほど歪んだ呪いはない」
満面の笑みを浮かべたA。
声を出そうとすると目の前が目を開けれないほどに眩しくなった。
眩しさが収まると俺は医務室のベットに寝ていた。
どうして。
俺は呪詛師達に捕まって。
それからどうなった。
記憶を辿るが記憶が無い。
体を起こすと視界が歪む。
またベットに倒れると視界の端に赤が入る。
目を向けると椅子で眠っているAがいた。
髪は短くなってしまっているが。
五条「A」
小さく呟くとベットの下から影が浮き上がって来た。
それは人の形へと変化する。
『起きたか』
五条「何があった」
『鵜久森Aには少々悪いが右腕を犠牲に悟にかかっていた呪いを解いた』
もう一度、椅子で眠っている鵜久森Aの姿を見ると右腕が無い。
五条「A」
『何？』
黒い影に手を伸ばすと凍るような冷たさが手に触れた。
五条「俺の隣で生きてくれ」
『言っただろう。愛ほど歪んだ呪いはないと』
五条「愛だと思うか？」
『愛、じゃないのか？』
五条「さァな」
嬉しそうに笑うAの声に自然と口角が上がる。
Satoru Gojo side end
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作者名：アルマジロ
| 作成日時：2023年9月2日 9時
