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-Episode65- ページ17

熱い、熱い、熱い。

撃たれた胸辺りから生暖かい液体が制服に染み込んでいく。

隣に座っている夏油さんが私の胸辺りを着ていた制服で押さえてくれているが表情は青ざめている。

目の前で言い争いが見えていたがあまりにも瞼が重たく逆らえず瞼を下ろした。

『この状況を回避するにはどうすればいいと思う』

聞こえた声。

その主は近衛Aのものだ。

『聞こえているのか』

私、死んだんじゃないの。

『どうだろうな』

どうだろうって…。

『生きたいか』

そりゃ生きたいよ。

『何故』

だってまだ幸せだって思える人生になってないもん。

そう言うと近衛Aは笑った。

『なら体を渡せ』

はい?

『現在悟は連れ去られた。後、切られた髪も貰う』

言っている意味が理解出来ない。

『素直にはいと言え。じゃなきゃお前も悟も死ぬぞ』

分かった。

一つ、条件がある。

髪はあげるけど体は五条悟を奪還したら返して。

『了解した』

ふとした瞬間、重たかったはずの瞼が軽くなった。

恐る恐る瞼を上げると目の前に服を着ていない私が立っている。

『初めまして、鵜久森A』

あぁ、私と似てるけど私じゃない。

近づいてくるとその違いがよく分かる。

瞳が五条悟と似ていた。

でも色は真っ黒でその瞳は満点の星空のよう。

『魑魅魍魎を見る目で私の事を見るな。至って普通の人間だ』

その恰好で言われてもな…。

視線を逸らすと太腿の内側に家紋が入っていた。

そう言えば前に家入さんに太腿に痣の様なものが無いかって聞かれたな。

『これがまじないだ』

近衛Aは愛おしそうにそれを指先で撫でる。

『ま、いい。手を』

言われるがまま両手を胸の高さまで上げるとまるで手押し相撲の様にお互いの手が触れ合う。

『目を閉じろ』

小さく頷くと体が落下する浮遊感を感じると意識が途切れた。









血の生臭さの中に混ざる人々の匂い。

そしてその中に漂う消えかけの懐かしい香り。

遠くから聞こえている声が段々とはっきりと聞こえ始める。

『この女の死体はどする』

『鵜久森A、等級は四級だそうだ』

『金になったとしても二桁前半だろうな』

『ならこの男と一緒に置いて行こう』

『だな』

胸倉を掴んでいる男の手が私から離れて行く。

その手を掴み、へし折った。

汚く五月蠅い悲鳴に下ろしている瞼を上げる。

綺麗な色の付いた世界が広がっていた。

ゆっくりと口を開き、言葉を放つ。

「五条悟を何処に連れて行った」
 

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作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年9月2日 9時

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